タイムラインに自分で投稿できない写真SNS
「ポパラッチ」がZ世代に支持される理由

https://www.poparazzi.xyz/

 2021年5月27日、一風変わった写真SNS系のアプリがApp Storeのランキングで全米1位を獲得し、海外だけでなく日本国内でも話題になっています。

 SNSの名前は「Poparazzi(ポパラッチ)」。これまでの写真SNS系のアプリと大きく異なる点は、自分のタイムラインに、自分で投稿できないという点です。

 どのようなSNSかというと、まず、友人がパパラッチする感覚であなたを撮影し、「Pop」(撮影した写真にタグ付け)します。するとあなたのタイムラインに、タグ付けされたあなたの写真が並んでいくというものです。つまり、「友人があなたをパパラッチした写真のみ」がタイムラインに並ぶ、新感覚のSNSです。

 もちろんパパラッチされた写真が、あなたのタイムラインに自動投稿されるわけではありません。タイムラインに投稿可能な友人を、あなたが承認する必要があります。投稿された写真へのリアクションは、絵文字のみ。意図的にコメント機能を実装しないことで、誹謗(ひぼう)中傷や荒らしを避けることができます。

 写真SNS系の代表でもある「Instagram(インスタグラム)」のタイムラインでは、フィルタで加工された美しい写真が並んでいます。しかし、このような「完璧すぎる投稿」は、SNSの利用者がときに心理的負担を感じてしまうこともあります。

「ありのままの自分を仲の良い友人に撮ってもらう」というPoparazziのスタイルは、Z世代を中心に新たなブームとなりそうです。

展示ツアーにおける聴覚障害者の課題に取り組む
「シースルーキャプションズ」

https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202106051969.html

 2021年6月5、6日の2日間、東京都江東区青海の日本科学未来館の常設展にて、筑波大学デジタルネイチャー研究室のチームが開発した聴覚障害者向けシステム、「シースルーキャプションズ(See-Through Captions)」を用いたガイドツアーが開催されました。

 シースルーキャプションズは、話し手の声を自動でテキスト変換し、透明ディスプレーにリアルタイムで字幕を表示する機能です。このシステムが生まれた背景には、これまで聴覚障害者が、こうした展覧会のガイドツアーで抱えていた課題がありました。

 最近は音声認識技術を活用してスマートフォンに字幕を表示させるアプリも増えていますが、こうしたアプリの活用や筆談によるガイドツアーでは、会話中にスマートフォンや紙に書かれた文字に目を奪われてしまい、作品をゆっくり鑑賞できない、手話によるガイドツアーでは、手話ができる人としかコミュニケーションを取ることができない、といった課題です。

 シースルーキャプションズは、こうした手話や筆談という手段では難しい、「自然なコミュニケーションの実現」を目的にしています。パネル越しに字幕を確認できるだけでなく、話し手の表情やジェスチャーも同時に見ることができるよう工夫されているのです。

 今回のガイドツアーによって、物理世界のアクセシビリティ(アクセスのしやすさ、利用しやすさ)向上にARなどのテクノロジーが貢献できる可能性を示しました。デジタルに関するアクセシビリティだけでなく、フィジカルな世界におけるアクセシビリティをテクノロジーを活用して向上させていくことも、デザイナーが追求していくことのできる領域なのかもしれません。

「インド株」ではなく「デルタ株」
WHOの方針で重要視された「言葉のダークパターン」

https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/

 英国で見つかった変異株は「アルファ」、南アフリカは「ベータ」、ブラジルは「ガンマ」、インドは「デルタ」――。

 WHO(世界保健機関)は2021年5月31日、新型コロナウイルス変異株の名称を、ギリシャ文字を用いたものに変更することを発表しました。

 以前はウイルスの名称に、複雑な学名や最初に検出された国や地域の名称を用いることが一般的でした。今回、ギリシャ文字を用いた理由についてWHOは、「発音しやすく、一般の人にもなじみやすくするため」、また、「特定の国や地域の名前を用いることによる、その国や地域のイメージを下げないため」と説明しています。

 こうしたWHOの決定は、「言葉のデザイン」の重要性を示唆しています。

 デザイナー界隈でも近年、「エシカルデザイン」や「ダークパターン」(一般的に「意図的にユーザー自身を不利な状態に追い込むデザイン」の意)といった言葉を用いて、デザインがもたらす倫理的問題を避けるための動きが活発化してきています。これは、デザインという行為が、一歩間違えると受け手を悪い状態に導いたり、受け手に被害を与えたりする力を持つためです。一方でデザインは、受け手にとって、体験や印象をより良いものにする力を持ち合わせていることも事実です。

「デザイン」という行為はそれだけの影響力を持っているため、デザイナーはつねに自分のデザインがどのような結果をもたらすのかを予測し、その結果に責任を持つ必要があります。

 このことは言葉をデザインすることに関しても同様です。今回の場合、従来の「インド株」のような、従来の国や地域の名前を使った名称は、その国や地域の人へ、暗黙的に差別的意識を生む「言葉のダークパターン」に陥っていました。

 ギリシャ文字を用いた変異株の名称が、世界中の人に浸透するにはまだ時間がかかりそうです。ですが、これをきっかけに、自分の言葉が受け手にどのような影響を与えるのかを、しっかり考えていきたいところです。

 以上、6月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。来月もお楽しみに!