「心理的安全性」提唱のハーバード大教授が語る、部下への悪いニュースの伝え方心理的安全性をどうやって創出すべきか Photo:PIXTA

「心理的安全性」の提唱者であるハーバードビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授の最新刊『恐れのない組織』が世界的ベストセラーとなっている。コロナ禍で苦境に陥り、リーダーが部下に悪いニュースを知らせなければならない場面も増えている。危機的状況に直面したリーダーができることとは何か。また、先の見通せない時代に、リーダーに求められる姿勢とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

リーダーは心理的安全性を
どうやって創出するか

佐藤 エドモンドソン教授は、心理的安全性を創出する文化を持つ模範企業の一つとしてトヨタ自動車(以下トヨタ)を挙げています。他の日本企業が自社に心理的安全性を創出したいと思ったら、トヨタの制度やシステムを参考にするべきですか。あるいは、独自の文化を創出するべきでしょうか。

エドモンドソン それは良い質問ですね。私はどの企業にも独自の学習文化があると思います。トヨタ生産方式は広く認知され、多くの企業に導入されてきましたが、その基本となっているのがトヨタ独自の学習文化です。

 トヨタの経営層は、従業員の誰もが会社を変えることができ、チームや会社全体に貢献する能力があることを深く理解していて、従業員もまた、それが自分たちの役割だと理解しています。これは文章化できないものです。目に見えない信頼関係がある一方で、「かんばん」「アンドンコード」など、目に見えて分かるようなシステムも取り入れています。トヨタ生産方式は、こうした学習文化によって成り立っているから強いのです。

 他の企業にも、その企業なりの学習文化が社内にあるはずですから、まずはそれを生かしていくことが重要です。たとえばピクサー・アニメーション・スタジオには、創造的な映画をつくるためのプロセスがあり、それに適した学習能力があります。それは高品質の自動車をつくるのとは別の能力です。


佐藤 新型コロナウイルス感染拡大の影響で景気が悪化する中、日本企業の中間管理職の中には、部下に悪いニュースをどう伝えれば良いか悩んでいる人も多くいます。こうした人たちにどのように助言しますか。