政府が小山田氏の人事にプレッシャーをかけた理由
「イジメや虐待はあってはならない行為」「大会組織委員会が適切に対応してほしい」。今月19日、加藤勝信官房長官は、五輪開会式で音楽を担当していた小山田圭吾氏の「障害者いじめ」問題についてこのように述べた。
一般市民にはわかりづらいが、これを「永田町語」に翻訳すると、大会組織委員会(組織委)に対して「何が留任だよバカ、さっさと辞任させろ」と強く迫っていることに他ならない。事実、この官房長官会見から6時間ほど経過した同日夕方に、小山田氏は辞意を表明し、夜にはそれを組織委員会が受け入れている。
多くのメディアは、小山田氏に引導を渡したのは「官邸」だと指摘している。
「当然だろ、あのまま留任していたら世界に日本の恥をさらしてしまう」という反応の方が多いだろうが、永田町界隈ではこの対応はかなり驚かれた。これまで官邸は、組織委員会がどんなに世界に恥をさらしても「人事」については一歩引いたスタンスだったからだ。
事実、森喜朗前会長の女性蔑視発言では、加藤官房長官は「辞任うんぬんということは、組織委でそもそも決めること」と我関せずの姿勢を貫いた。五輪に政治介入しない、という政府の原理原則に沿った加藤氏らしい「模範回答」だ。
しかし、今回はそうではなかった。「おい!早く、あのヤバい奴をクビにしろ!」と言わんばかりに前のめりで組織委にプレッシャーをかけている。では、なぜこのような異例の対応になったのかというと、政治の世界に生きる人々からは、「首相のメンツを守るためだったのでは」という指摘が多い。