みどりの食料システム戦略 第2回:ビジネスの現場で、もう始まっている「農と食の未来」

農林水産省

平地での低コスト大量生産型の企業農業は、アグリテックの導入が鍵。県外の先端IT企業や地元の農林総合研究所と連携している(ドローン画像提供/オプティム)
ドローン直播した圃場

「稲作では直播が鍵になると考え、V溝乾田直播、湛水直播、越冬直播、ドローン直播の4種類を導入しています。ビニールハウスでの苗代作りを省ける省力・省コストも大きいのですが、もう一つ大きいのは農作業の時期を分散できること。直播では、慣行農法より田植えや稲刈りの時期がずれるので作業のヤマが広く分散されます」

 業務量のピークを機械化で乗り切る方式では、農機の調達コストもエネルギー使用量もかさむが、農繁期を分散させればそうしたデメリットはない。直播に切り替えた水田ではコメの収量が1割ほど下がる場合もあるが、コスト削減の効果はそれを補えるほど大きく、コメの品質には遜色がないという。

 IT系の管理技術の面でも、アグリーンハートは先端企業や研究機関と協業するほか、一部の技術を自社で開発するほど。労働力不足が進む一方、環境負荷の軽減も求められる日本の農林水産業において、イノベーションで省力化・効率化を追求する同社の取り組みは、新しいモデルとなり得る。

中山間地での有機農業で消費地にアピール

 アグリーンハートには、もう1本の柱となる事業がある。耕作放棄地が増える中山間地での有機農業、つまり「高付加価値少量生産型」の「職人農業」だ。

休耕地を有機農業でふるさと再生している安入地区の中山間地エリア

 黒石市北東部の高舘地区、八甲田山の裾野に位置する安入(あにゅう)にある緩やかな棚田の5ヘクタール弱で手掛けているのは、高度な有機農法による稲作だ。平地での稲作でも最大8割の減農薬栽培を行っているが、安入では無農薬・無化学肥料での栽培が実現している。

ワインのようなパッケージ(1袋2キログラム)ごとに生産年とシリアルナンバーを入れた「安入米」

 安入での職人農業の生産コストは平地での企業農業よりはるかに高く、同社の直販サイトでのコメの価格(10キログラム・税込み・送料別)で比較しても、平地産の「たくろん米」が4100円であるのに対して、安入産の「安入米」は1万2000円。

 だが、この価格設定は、コストの高さがただ反映された結果ではなく、有機農業の職人農業で生み出される付加価値の高さまでを織り込んだ戦略的なものだ。低コストでの大量生産は難しいという中山間地農業の難点を、有機農法による少量生産と高付加価値化によって利点に変える。これは中山間地という土地条件を資源として捉えており、地域としての持続可能性が高まる方策でもある。

小田急線世田谷代田駅前の「DAITADESICAフロム青森」には従業員2人が常駐。年会費5000円の会員制度も導入し、ファンづくりを図る

 こうしたアグリーンハートのマーケティングや販売面での取り組みの中で最も目を引くのは、東京への出店だろう。昨年8月、小田急線の世田谷代田駅前に売り場面積60平方メートルほどの直営店「DAITADESICAフロム青森」をオープンさせた。生産と消費の現場を結び付け、相互の理解を深め合う舞台とすることを目指している。

 また、世田谷代田にちなんで「だいたんぼ」と名付けられた安入地区の水田での稲作について、ファンクラブの要素も備えた会員制度も導入。年会費を払った消費者はプロジェクトをサポートする「だいたんぼクルー」となり、一定量のコメが贈られるほか、コメの育成をインターネットで見守ったり農作業体験に参加したりできる。産品のモノとしての価値に加えて、モノが生まれて消費者に届くまでのストーリーをも含めたコトの価値までを伝える試みだ。

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