みどりの食料システム戦略 第2回:ビジネスの現場で、もう始まっている「農と食の未来」

事例2 オイシックス・ラ・大地[東京都品川区]
ふぞろい・不格好だっておいしい・楽しい!
流通だから実現できる生産・加工・消費の持続可能性向上

◆「みどりの食料システム戦略」への主な対応分野◆
③ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立
④環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進

「形のきれいさ、重量の大きさを基準とした一般の規格とは違い、当社は安全でおいしいことを商品の価値としています。おいしいからこそ不格好でも人気になるし、形がふぞろいでユニークな野菜や果物は食卓の楽しい話題にもなります。そういうおいしさ、楽しさがあることをお客さまに知っていただくことは、当社の大きなテーマです」

 そう説明するのは、オイシックス・ラ・大地の経営企画本部新規事業開発準備室でグリーンプロジェクトのリーダーを務める東海林(とうかいりん)園子氏だ。

 同社は、オイシックス、らでぃっしゅぼーや、大地を守る会の3社が統合して生まれた企業。いずれも自然派食品の宅配事業を長らく手掛けてきており、食と農を巡る安心・安全から環境・持続可能性に至るまでの問題意識は、統合後の現在まで一貫して高い。

みどりの食料システム戦略 第2回:ビジネスの現場で、もう始まっている「農と食の未来」オイシックス・ラ・大地
経営企画本部新規事業開発準備室
グリーンプロジェクトリーダー
東海林園子

 例えば、不格好でふぞろいな農産物は、たとえ環境・持続可能性に配慮していたとしても、一般の小売り流通においては規格外として“冷遇”され、安価な加工用に回されたり生産現場で廃棄されたりすることが珍しくないのだが、オイシックス・ラ・大地では話は別だ。

 栄養が集中するために不格好でふぞろいになるが、果肉感が高く、うま味が強い「鬼花トマト」は人気商品。この他にもベビーリーフより少し大きい「チャイルドリーフ」や小型の「小まるじゃがいも」、鉛筆のように細いアスパラや、「ふぞろいほたて」「ふぞろいさんまフィーレ」「もったいない鮭切り身」といった規格外の農水産物も積極的に販売している。

 それは冒頭で紹介した東海林氏の言葉通り、不格好でふぞろいな産品は消費者に、おいしさだけでなく楽しさも提供できる存在だからだ。同氏は語る。

「生産者さんの話を伺うと、丹精込めた有機栽培の農産物なのに、規格外品を出荷するのは怖いのだそうです。それで評価が下がるのではないかと思われるからです。ところが、私たちがお客さまに提供すると、反対に喜んでいただける。それを伝えると、今度は生産者さんも安心して安定的に出荷できるようになります」

 生産者は売れないと思って出さない。消費者は見掛けないので知らない──そうした不幸で不毛なミスマッチを、川上(産地)にも、川下(食卓)にもつながっている流通事業者は解決することができるのだ。そして、それは、見た目重視に伴う環境負荷を減らしていくことにもつながるだろう。

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