みどりの食料システム戦略 第2回:ビジネスの現場で、もう始まっている「農と食の未来」

農林水産省

一般向け流通では規格外の青果は多くが廃棄されるが、フードロス統計には計上されない。ふぞろいならではのおいしさと楽しさを訴求すれば“もったいない”は抑制できる

生産者と消費者の橋渡し役だからこそできること

 もちろん、フードロスの抑制・削減を可能にするこうした取り組みには、消費者の理解と支持が欠かせない。オイシックス・ラ・大地の顧客には、食の安心・安全やそれにつながる社会問題の改善についての意識が高い層が多いものの、正しさだけでビジネスを存続させることは難しい。

 東海林氏によれば、一つの鍵は同社の販売ルートとして大きな部分を占めているサブスクリプション(定期購入)モデル。「会員であるお客さまへの定期的な直接販売というサブスクは、販売量の推移がある程度、事前に把握でき、生産者への発注が的確かつ計画的に行えます。その結果、生産・流通の各段階でロスが出にくいサステナブルリテールを実現できます」という。多くの生産者が安定した販路を得て安心して有機栽培に取り組めている背景にも、このサブスクモデルがある。

市場に出る農産物を買うのではなく、契約農家から直接仕入れる。いつ・何を・どれくらい作付けし出荷するかも生産者との相談で決まるため、ロスが少ない

 もう一つ、オイシックス・ラ・大地の先進的な取り組みを支えているのは、消費者においしさと楽しさを、生産者に安心と安定を与えられるように、その両方に目配りを怠らない流通事業者としての姿勢だ。それは不格好でふぞろいな農水産物の商品化を見ても明らかだろう。農水省が「みどりの食料システム戦略」でうたう「消費者と生産者の交流を通じた相互理解の促進」がすでに実現できているのだ。

 生産者からの調達と消費者への販売を直接手掛けることを基本とする同社だからこそ、いち早く形にできたのだが、農林水産業と食の分野において生産者と消費者の橋渡し役を担う流通事業者の全てにとって、今後の先例となり得る姿勢でもある。そして、生産者からも消費者からも、そういう橋渡しができる流通が今、求められている。

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