こうした成功の大きな基盤となっているのが、同社ならではのエネルギーの自給体制だ。24時間稼働で1日当たり合わせて283トンの産業廃棄物を処理できる焼却発電施設(2基)では、焼却熱を利用して最大5200キロワットの発電が可能であることに加え、廃熱も、熱交換器と熱媒油を用いたトランスヒートコンテナ(下図参照)によって余すところなく利用できる。
この電気と熱が農業やリサイクルといった事業で活用されており、「アグリ事業向けのエネルギーは、ほぼ自社で供給できる」(高田氏)という。従来のハウス栽培では主に重油などが暖房に用いられ、そのコストが生産者の大きな負担になっているほか、化石燃料の使用は持続可能性の観点から削減が求められている。
だが、富山環境整備の場合、ハウス栽培の冷暖房は、通年実施している廃棄物処理事業で副次的に生まれる電気と熱を活用していることから、化石燃料をほぼ使用せず、ハウス栽培を実施しても追加的な環境負荷とはならない。
このような自立的なエネルギー源の確立は画期的で、16年度にはNTTデータ経営研究所と共同で、タイにおけるCO2削減支援業務の委託を環境省から受けているほど。「廃棄物は資源」という社是を掲げる富山環境整備ならではの成果であり、同時に、農水省が「みどりの食料システム戦略」で打ち出した「資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進」という目標が、いち早く具現化されたものともいえる。
エネルギーありきではなかった農業参入
もっとも、廃棄物焼却で生まれるエネルギーの有効活用は、富山環境整備が農業分野に乗り出す際の大きな動機ではなかったという。実際、参入は00年で、電熱供給の可能な焼却施設の稼働は08年のこと。高田氏によれば、農業事業がスタートする際に大きなテーマの一つは、“廃棄物の最終処分場の跡地を活用できないか”というものだった。
その方策として浮上したのが農業だったのだが、跡地は、処理を終えた廃棄物の残さで埋め立てられて生まれる平地。無害ではあるものの、そのままでは土耕栽培には適さない。しかし、ハウス内での隔離栽培なら、この問題も乗り越えられる──農業参入の背景には、こうした判断があった。