将来のインフレ動向のカギを握る重要なシグナルがここ1カ月に後退の兆しを見せ始めている。足元のインフレ加速はおおむね一時的との見方を示している米連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、安心材料となりそうだ。そのシグナルとは、企業や消費者、労働者、投資家が予想する向こう1年から10年の物価動向であるインフレ期待だ。インフレ期待は自己実現的になり得るため、物価の先行きを占う上でエコノミストが重視している。インフレ期待は、一連の調査や市場の指標から算出される。足元では総じて、昨年10月から今年5月にかけて跳ね上がった後、鈍化に転じていることを示している。ミシガン大学の7月の消費者調査では、1年先のインフレ期待が4.8%と、2008年8月以来の水準に跳ね上がった。だが、1年先のインフレ期待は消費者物価指数(CPI)統計に強く影響される傾向がある。6月の米CPIは13年ぶりの高水準となる前年同月比5.4%だ。一方、ミシガン大によると、5~10年先のインフレ期待は2.9%と、5月の3%からやや低下。2000~2019年の調査平均である2.8%に近づいた。