東京電力グループは東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、経営危機に陥った。事故後に社員は給与2割カットとなり、福利厚生も次々と削られた。ところが、社員の平均給与は2020年度には震災前を上回る水準になっている。特集『東京電力 解体』(全5回)の#4では、東電社員の給料が「3.11」前を上回った理由を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
原発事故で東電社員の生活が暗転
新卒は年収200万円
「若手社員に罪はない。新卒はかわいそうだった。手取りが10万円ちょっとだと、都内で生活するのは苦しかったはず」。ある東京電力OBは、申し訳なさそうに振り返った。
東電グループは、2011年3月の東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の事故で経営危機に陥った。無論、東電グループ社員の生活は、福島第一原発事故を境に大きく暗転した。
東電グループは同年6月、一般職20%、管理職25%の年収削減に踏み切った。東電グループ社員の12年度の平均年収は約620万円で、震災前から約140万円下がった。新卒社員の年収は約200万円で、就職活動で“勝ち組”といわれる水準には程遠いものだった。
福島第一原発事故から10年が過ぎた。東電グループ社員の平均年収は、819万円。事故前を上回る水準にまで達している。
東電グループは16年から持ち株会社制に移行しているため、通常の事業会社より平均給与が高めに出る「癖」があることを考慮しても、事故前の水準にまで回復してきているといえる。
なぜ東電グループ社員の給与は、復活したのか。