東京電力史上最年少の53歳でトップに抜てきされた小早川智明社長は、就任から5年目に突入した。来期にも社長交代との観測が流れている。特集『東京電力 解体』(全5回)の#3では、東電の次期社長レースの模様をお届けする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
東京電力史上最年少で社長に抜てき
日経のスクープで知らされた小早川氏
2017年3月26日、神奈川県南部にある小早川智明・東京電力エナジーパートナー社長(当時)の自宅周辺には、新聞記者らメディア関係者が詰め掛けていた。
「日本経済新聞」が同じ日の朝刊で、東京電力ホールディングス(HD)の次期社長に小早川氏が史上最年少で抜てきされることをスクープ。小早川氏の自宅にメディア関係者が詰め掛けたのは、スクープを「後追い」するためだった。
小早川氏は、気が置けない同僚からの電話に対して「本当に何も知らされていないんだ。自宅の周りに記者が来ていて、家族も怖がっている」と答え、驚きを隠せない様子だった。
なんと小早川氏も日経の記事で、自身が東電HDの社長に就くという驚愕の事実を知ることとなったのだ。
傍流の営業畑から抜てきされた小早川氏は、電力業界の盟主である東電HDのトップに就任して5年目に突入した。
市場関係者からは「営業マンとしては優秀かもしれないが、経営者としては評価できない」と厳しい声が寄せられている。
小早川氏が社長に内定した17年4月時点で、東電HDの株価は400円台前半。18年末まで株価は右肩上がりで上昇し、19年1月には一時700円台後半まで記録したが、その後下落が続いた。21年7月末時点で、東電HDの株価は社長就任時を下回り、とうとう300円を割った。
社長就任以来、最大の課題だった新潟県の柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は、テロ対策の不備が判明するなどの度重なる不祥事により、今もなお実現できていない。電力小売り全面自由化で顧客流出が止まらず、業績不振が続く小売り事業も思うように立て直せないままである。
そんな小早川氏も、来期には社長交代との観測が出ている。そこで、次期社長レースについて徹底取材した。ポスト小早川は、4人に絞られたもようだ。
次ページ以降では、ポスト小早川の“条件”、そしてポスト小早川の顔触れなどについて詳らかにする。