東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故後、東京電力の優秀な社員は見切りをつけて同社を去った。東電のエリートOBは現在の東電グループについて、何を思うのか。特集『東京電力 解体』(全5回)の最終回では、東電OBへの徹底取材を基に、覆面座談会形式にまとめた。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
A…企画系役員OB
B…営業系役員OB
C…企画系中堅社員OB
D…営業系中堅社員OB
東電HD会長就任の小林氏に
OBは「お手並み拝見」
――経済同友会代表幹事や三菱ケミカルホールディングス(HD)会長などを歴任した大物経営者、小林喜光氏が東京電力ホールディングス(HD)の新しい会長に就任しました。
A 小林さんは、環境や社会課題を起点にしてソリューションを提供し、収益力を向上させる経営手法「KAITEKI」を三菱ケミカルHDで実践してきた。実はこの経営手法、東京電力の中興の祖である木川田一隆が重視した「人間尊重」の経営理念と極めて親和性が高い。
小林さんは、自身の経営手法を東電グループにも持ち込むだろう。現役社員からは意外と腰が低い経営者だと聞いている。小林さんに戦々恐々とする東電グループの社員は多いと聞くが、意外とうまくやるのではないか。
ただし、小林さんが三菱ケミカルHDで実践した「選択と集中」によって、東電グループを切り刻むことが良いこととは思わない。
B 名経営者と評価が高い小林さんだが、果たしてそうだろうか。舌鋒鋭い発言でメディア受けは良いかもしれないが、三菱ケミカルの業績が目覚ましいものだったわけでもなく、株価を急上昇させたわけでもない。経営者としての実績には疑問符が付く。
政治が複雑に絡む東電という会社は、普通の民間企業ではない。日立製作所をV字回復させた“ラストマン”の川村隆さんですら、東電HD会長としては何もできなかった。小林さんがどこまで通用するのか、お手並み拝見というところ。