2011年3月11日の震災以降、3月30日より東北でのボランティアを開始した二人の美大生がいた。小森はるかさん、瀬尾夏美さんである。小森さんは映画、瀬尾さんは絵画の勉強をしている。幾度となく被災地に足を運び、被災地の人たちの話に耳を傾け、風景を映像や写真やスケッチとして記録。アートイベントやTwitter、ブログ等を利用し、さまざまな形で「被災地」を発信し続けてきた彼女たち。
2012年4月、在学中の東京藝術大学大学院を休学、岩手県気仙郡住田町に移り住み、現在は大船渡市にある仮設商店街「おおふなと夢商店街」の中にある復興地図センターにて、地図を使った活動の支援をする仕事をおこなっている、瀬尾夏美さんにお話を伺った。

瀬尾夏美さんがスケッチした、
岩手県陸前高田市気仙町の風景
拡大画像表示

「記憶」を「記録」する

  2011年の3月の終わり、はじめて被災地を訪れました。そこでその景色の凄まじさに息を飲みました。報道で見る何倍もの力が、想像にもなかった大きさと質量を持ってその場所を襲ったということを、とにかく実感させられました。

  私の出身は東北ではなく東京です。親戚などがいるわけではありませんでしたので、とりあえず内陸のネットカフェや車で寝泊まりをしながら、毎月被災地を訪れることにしました。幾度と東北沿岸を中心とした被災地を訪れ、たくさんの方々から話を伺ったり、あちこちの被災地を歩きました。
  そうする中で、見聞きしたものごとの中に、今起こっていること、過去のこと、少し未来のことなどがたくさん含まれていることに気づきました。それらは情報ではなく「記憶」のようなものです。この「記憶」を残していくことこそ、大切だと思いました。
  そこで文章やスケッチにしたり、映像や写真を撮ったりと、それぞれ方法を模索しながら、「記憶」の記録活動をおこなっていくことにしました。