日本のインフレ率が上がらない理由として、「消費者物価指数は『貧乏人物価指数』である」という仮説を考えてみた。消費者物価に大きな影響を与えているのは、お金持ちから見ると相対的に「貧乏人」であるところの庶民(普通の人たち)だ。この仮説を突き詰めていくと、インフレ率2%を達成する鍵がお金持ちと貧乏人の格差解消であり、そのための秘策が「ベーシックインカム」であるという結論に達する。その理由を解説したい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
二つの経済、二つの物価?
「貧乏人物価指数」仮説を考えてみた
日本の物価上昇率(インフレ率)がなかなか目標の「2%」に達しない理由について、あらためて考えてみた。日本銀行が自ら認めているように、大規模な金融緩和を続けているにもかかわらず、近い将来には日本の消費者物価は目標とする「2%」に届きそうもない。
日本のインフレ率がなかなか上がらない理由について筆者は、長短の金利がほぼゼロまで下がると金融緩和だけでは効果が乏しく、財政の後押しが必要であるにもかかわらず、それが不十分であることが問題なのだと考えてきた。
実際、2014年、19年の消費税率引き上げは不適切なタイミングでの緊縮財政的バイアスをもたらして、日本の経済と物価上昇の両方に不必要なブレーキを掛けた。物価の問題は「日銀だけ」で解決することは難しい。この点は、日銀も主張していいし、はっきりさせておいた方がいいと思う。
だが、財政政策は確実に重要な論点の一つではあるものの、どうやら問題はこれだけでもなさそうなのだ。
一つの仮説だが、「消費者物価指数」が「貧乏人物価指数」だと考えてみたら、何が見えるだろうか。