トヨタEV化への最大の課題は、下請け企業の再編

 FCVについては別の機会に話すことにして、ここではEV化の2つの課題について話そう。 1つ目はバッテリー供給力だ。どれだけ安いコストで、十分な数量が供給できるかが肝になる。

 2つ目は、下請け企業の再編だ。EV専業で内製率の高いテスラにとっては無関係だが、全国で4万社以上の下請企業を抱えるトヨタにとっては最大の課題と言っていい。

 EV化すればエンジンやラジエーター、駆動系のプロペラシャフトなどガソリン車で約3万点だった部品が3分の2から半分程度に減り、国内で約300万人の自動車関連社員の内、約30万人が雇用を失うという試算まである。

 トヨタなどガソリン車で儲けてきた大手自動車メーカーが、痛みを伴う下請け再編を本気で進められるのか? 歩むべき道は2つだ。時間をかけてソフト・ランディングを目指すか、それとも短期決戦でハード・ランディングを断行するか。

 2015年に排ガス不正事件で3兆円を越える罰金や賠償金を支払ったVWは、経営陣を入れ替え背水の陣でハード・ランディングを選んだ。かたやトヨタは儲かっている。儲かっている時に、返り血を浴びる大胆な改革はしにくいものだ。

フォルクスワーゲンが掲げる「打倒テスラ」の本気度

 トヨタは「慎重な」企業だ。石橋を叩いて渡る経営で成長してきた。だが、それは過去の成功法則でしかない。温暖化対策が急務となるいま、その手法では戦えない。

 VWも巨大企業だが、EV化へなりふり構わず突進している。そのVWが掲げるのは「打倒テスラ」だ。

 2008年、テスラがEVスポーツカー「ロードスター」を世に出した時、自動車業界はベンチャー企業のテスラに目もくれず、「EVはまだまだ先のことだ」と構えていた。しかし、2012年にテスラがEVセダン「モデルS」を登場させ人気を博すと、「EVには市場がある」と大手自動車メーカーは気づき慌てだした。