コロナ禍にあっても、トヨタ自動車の実力は競合のホンダや日産自動車を寄せ付けず、むしろ経営力格差は広がっている。だが、コロナショックがもたらす「超縮小経済」の下では、これまで競争力の源泉であり続けた“強み”が“弱み”へ変わる怖さも生じる。例えば、原価低減に貢献してきたサプライヤー構造や内燃機関を主軸とする技術群こそ、トヨタのアキレス腱となり得るのだ。特集『トヨタ「一強」の葛藤』では、7月27日(月)から31日(金)までの全5回で、日本最強のレガシー企業が抱える難題をあぶり出す。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
#1 7月27日(月)配信
トヨタがテスラになれなかった根源的理由、開発思想とコストで明暗
米EV(電気自動車)メーカーであるテスラが、時価総額でトヨタ自動車を抜き去り、世界の自動車産業のトップに躍り出た。トヨタが、販売台数では「30分の1」にすぎない新興メーカーに企業価値で負けたのはなぜなのか。テスラに対する投資家の“期待先行”だけでは説明できない「根源的な敗因」に迫った。
#2 7月28日(火)配信
トヨタが「ガソリン車」工場を閉める日、中国BYDとのEV計画が大始動
コロナ禍で自動車製造は大減産を迫られ、世界の自動車市場の成長はストップした。国内生産300万台を掲げてきたトヨタ自動車とて、ガソリン車の生産過剰問題と無縁ではいられない。これまでトヨタの競争力の源泉だった内燃機関を主軸とした技術、サプライヤーの系列構造、販売店の直販体制が「過去の遺産」となりつつあるのだ。強みが弱みへ、弱みが強みへ――。ビッグクライシスに価値観の転換やビジネスルールの変更はつきものだ。巨艦・トヨタは大胆にビジネスモデルを転換して、クルマ専業メーカーから脱却することができるのか。
#3 7月29日(水)配信
トヨタ最大のアキレス腱、系列サプライヤー3.8万社の救済計画に死角
トヨタ自動車が、次々とサプライヤー支援策をぶち上げている。日本自動車工業会が主導して“通称・自工会ファンド”を創設したり、1兆2500億円に及ぶ緊急融資枠を設定したりというのが、その支援策のメニューである。トヨタ系列のサプライヤーピラミッドは裾野が広く、ティア1(1次下請け)とティア2(2次下請け)の上層サプライヤーだけでも約3.8万社が存在する。トヨタは金融機関を動員して自動車部品の再編成を促す計画だが、その計画には死角も見え始めている。
#4 7月30日(木)配信
トヨタ社長が敷く「超」中央集権、若手抜擢と異端粛清を乱発する理由
就任から11年目を迎えた豊田章男・トヨタ自動車社長は執行役員を削減し、グループ従業員36万人を最高幹部わずか9人で統べる「超」中央集権体制を敷いた。一方で、人材枯渇があらわになっている主要グループ会社にはトヨタ本体から幹部を送り込む「落下傘人事」にも着手、グループの統率を図っている。重量級がそろっていたかつての経営陣に比べて“小粒”になったといわれる現体制。ただでさえ“変数”が多く経営のかじ取りが難しくなっているこの時代に、トヨタを変革できる組織へ導ける布陣になっているといえるのか。
#5 7月31日(金)配信
トヨタが「新技術」を爆買い、足りない標的は半導体・素材と自動運転
従来、基幹デバイスや基幹技術を内製化するのがトヨタ自動車の方針だった。今も、電気自動車など電動化に不可欠なデバイス・技術の獲得には余念がない。その一方で、従来のクルマとは離れた新しい領域については、異業種・ベンチャーへの資本参加、競合との協業など新しい「組み方」も続出している。金に糸目を付けずに新領域でも「トヨタ帝国」は存続できるのか。技術の側面からトヨタの野望をひもとく。
Key Visual by Noriyo Shinoda