50万部を突破した堀江貴文の最大ベストセラー『ゼロ』がついにマンガ化! 同書『マンガ版ゼロ』では、幼少期から現在に至る堀江貴文の人生をマンガでエキサイティングに描き、そこから浮かび上がる仕事論・人生論を分かりやすくまとめている。
今回の記事では、中学時代の堀江がパソコンと出会い、はじめて「働くこと」の意味を実感する部分を『マンガ版ゼロ』から抜粋して紹介する。九州の片田舎に生まれた少年が、現在のホリエモンへと成長していく重要な分岐点となった経験とは? 将来に不安を抱くすべて若者に贈る!(連載の過去記事はこちらから)

ホリエモンが教える「『働くこと』を楽しむための秘訣」

人生を変えた
パソコンとの出会い

 中学生になった僕には、ひとつの決定的な出会いが待っていた。ある意味、その後の人生を決めたといっても過言ではない出会いだ。

 そう、コンピュータとの出会いである。

 僕が中学に入学したのは、1985年。茨城県つくば市で科学万博が開催された年だ。子どもたちは科学やSFに強い関心を持ち、僕も科学雑誌を読み漁っていた。そして話題の中心にあったのは、いつもコンピュータだった。

 僕には確信にも似た予感があった。コンピュータを手に入れれば、なにかが変わる。この退屈な日常が、まったく新しいものへと変化する。コンピュータの先にはまぶしい未来があるはずだ、と。

 予感は的中した。退屈な日常は入学祝いのパソコンにより一変する。その魅力に完全にハマったのだ。プログラムを入力すると美しい絵が表示され、音楽が流れ、ゲームの世界が立ち上がる。まるで魔法使いになったような、とてつもない全能感に包まれる。

ホリエモンが教える「『働くこと』を楽しむための秘訣」

 そしてなにより、パソコンは圧倒的に自由だった。ファミコンのようにつくられた世界で遊ばされるのではなく、自分が遊ぶ世界を自分の手でつくることができる。コンピュータの技術は日進月歩で進化を続け、この先どうなるんだろうというドキドキも強かった。

 コンピュータの魅力に取り憑かれた僕は、学校や友達そっちのけでプログラミングに明け暮れ、すぐに初心者用のパソコンでは我慢できなくなった。そこで中学2年のとき、思いきって本格派のマシンを購入する。

 だが、さすがに2台連続では買ってもらえない。そこで「新聞配達をして全額返済する」という約束のもと、親から20万円ほど借金して購入したのだ。

働くことの意味を
実感するきっかけ

 中学生が親から借金をして、20万円もするパソコンを買う。この話に驚く人もいるだろう。

 おそらく両親は「働くこと」の価値を教えたかったのだと思う。わが子の授業参観より働くことを選んだ両親だ。僕の熱意にほだされたわけではなく、新聞配達という「仕事」を通じて、社会の厳しさやお金の大切さを知ってほしかったのだろう。

 しかし残念なことに、僕は新聞配達からはなにも学べなかった。毎朝5時台に起きての配達作業は、ただの拷問でしかなかった。はじめてバイト代を受け取ったときも、「こんなに苦しい思いをして、たったこれだけか」という落胆に似た気持ちしかなかった。

 僕が「働くこと」の楽しさをはじめて実感するのは、そのころ思いがけず舞い込んできたある依頼がきっかけだった。通っていた英語塾の講師から、塾のパソコン入れ換えに伴う教材システムの移植ができるかと打診されたのだ。

 本来なら業者に委託するほど高度で大変な移植作業だ。できるかどうかはわからないけど、チャンスだと直感的に察知した僕は、「できます!」と即答した。ここで断るなんてありえない。

 それからは試行錯誤をくり返しつつも無我夢中でプログラミングしていった。ご飯のときも、お風呂に入っているときも、ずっとシステムのことばかり考えていた。

 作業が無事終了し、受け取った報酬はおよそ10万円。中学生にとってはかなりの大金だが、金額のことはどうでもよかった。

 なによりも大きかったのは、自分の能力を生かし、大好きなプログラミングを通じて誰かを助け、しかも報酬まで得ることができた、という事実だ。新聞配達のように、誰にでもできる仕事ではない。クラスの友達はもちろん、両親にも、学校の先生にも、塾の講師たちにもできない。プログラミングが得意な僕だからこそ、直接指名を受けた仕事だ。

ホリエモンが教える「『働くこと』を楽しむための秘訣」

 僕のつくったシステムに講師の人たちが驚きの声を上げ、握手を求め、そしてたくさんの生徒が学んでいく。僕の流した汗が誰かの役に立つ。

 この達成感、誇らしさ、そして報酬を受け取ったときの感慨は、とても勉強や新聞配達では味わえない種類のものだった。生まれてはじめて、「堀江貴文」という存在を認めてもらった気がした。自分という人間に、自信を持つことができた。

(次回に続く。※この記事は、『マンガ版 ゼロ』からの抜粋です。)

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
ホリエモンが教える「『働くこと』を楽しむための秘訣」

1972年福岡県八女市生まれ。実業家。(株)ライブドア元代表取締役CEO。SNS media&consulting(株)ファウンダー。東京大学在学中の96年にオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。04年以降、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補などで既得権益と戦う姿が若者から支持を集め時代の寵児に。しかし06年1月に証券取引法違反容疑で逮捕され法廷闘争の末に実刑判決を受ける。11年6月に収監され長野刑務所にて服役。本書の原作『ゼロ』刊行直後の13年11月に刑期を終了し、ふたたび「ゼロ」からの新たなスタートを切った。現在は宇宙ロケット開発、アプリ開発、オンラインサロン運営などで幅広く活躍。