スタッフのために作ったマスクがコロナ禍での明暗を分けた

 2020年には、飲食店の倒産が過去最多の数字を記録した。そんななか、「絶滅危惧種」とまで呼ばれた「ドムドム」が、なぜ売上を伸ばし続けられているのだろうか。

「小さい会社ならではの臨機応変な機動力を活かして、その時々の状況を分析し、前に進めた結果じゃないかなと思っています。この状況は、まったく想像できなかったじゃないですか。どんなに優秀なビジネスマンでも、最新のAIでも、コロナ禍を予測することは不可能だった。『データを集めて精査し、マーケティングする』というビジネスのやり方だけでは、ドムドムを再生させることはできないと思いました」

 もちろん、データや数字をすべて捨てたわけではない。けれどもそれ以上に、その場その場でお客様やスタッフの様子を観察し、「人々に求められるもの」が何かを考え、提供し続けることに力を注いできたという。

 たとえば、今回の黒字化の大きな勝因となったのは、臨時で立ち上げたECサイトでのオリジナルマスクの売上だった。

「とはいっても、もともとは『従業員を守りたい』という思いからつくったもので、ここまでの大ヒットになるとは予想していませんでした」

 緊急事態宣言のさなか、ドムドムハンバーガーはスーパーマーケット内のテナントも多く、大部分が営業を続けていた。「当時は日本中でマスクが不足している状況でした。会社としてスタッフを守るのは最重要事項ですから、各店舗にマスクを配布することにしたんです。それで、当時品薄だったマスクをお客様にもお分けしようと、若干数をレジ横で販売することにしました。お客様にマスクをしていただくことは、結果的に従業員を守ることでもありますから」

 売上を立てるための戦略ではなく、社会貢献の意味もこめての行動だったため、新商品扱いはせず、大々的な告知なども実施しなかった。

 ところが、店頭での販売直後「ドムドムのマスクがかわいい!」とSNSで瞬く間に拡散され、店舗に人が押し寄せたという。予想外の展開だったが、ここでも藤﨑さんの決断力が功を奏した。

「即、店頭販売の中止を決定しました。感染予防のためのマスク販売なのに、店舗が密になっては本末転倒です。そこで、急いでECショップの企画を立ち上げることにしました」

 10日後にはサイトをオープンさせ、いよいよ一般販売を開始したマスクはたった1分で完売。現在でも品薄状態が続いているという。