各社の決算に話を戻し、セグメント別の営業利益を見てみたい。昨年度第1四半期の各社の運輸セグメント(鉄道、バスなど)は最小で約14億円(相鉄)、最大で約187億円(東京メトロ)、その他軒並み50億円~100億円の赤字を計上していたが、前述の通り定期外旅客の回復により、今期は東武と東急が黒字に転じた他、小田急、相鉄HD、京王、阪急阪神HD、西武HDの5社が営業赤字10億円以下まで改善している。

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 一方、運輸セグメントの営業赤字が大きかったのは東京メトロの約36億円、京成の約35億円、近鉄GHDの約33億円、京急の約31億円、南海の約26億円だった。東京における外出自粛の影響を最も受ける東京メトロ、特急利用と観光利用の落ち込みが激しい近鉄、そして空港アクセスを担う京成、京急、南海は回復までまだ時間がかかりそうだ。

 運輸以外のセグメントでは、ホテル・レジャーは各社とも引き続き大きな赤字を計上しているが、不動産セグメントは堅調で、各部門の赤字をカバーしている格好だ。ただ、近鉄GHDと西武HDはホテル・レジャー部門の赤字が重すぎる。

 日本経済新聞は7月16日、西武HDが「ザ・プリンスパークタワー東京」など国内40施設程度のホテルやレジャー施設を1000億円以上で売却し、資産を自ら保有せずに運営に特化する「アセットライト経営」への転換を進める方針だと報じている。近鉄GHDも3月に8つのホテルを米投資ファンドに売却すると発表しており、各社のホテル・レジャー部門の再編は加速することになりそうだ。