東京メトロ東西線は中野~西船橋間を結ぶ路線で、JR東日本の中央本線中野~三鷹間と総武本線西船橋~津田沼間、および東葉高速鉄道西船橋~東葉勝田台間との相互直通運転が行われている。だが、あまり知られていないが、東西線には、線路がつながっていない東武鉄道(以下、東武)とも、意外な結びつきがある。(レイルウェイ・ライター 岸田法眼)

深川検車区行徳分室に
03系が留置された理由

写真:深川検車区行徳分室に留置されている03系深川検車区行徳分室に留置されている03系(写真はすべて筆者撮影)

 東西線妙典~原木中山間の江戸川付近に、深川検車区行徳分室という車両基地があり、2019年から日比谷線先代車両の03系が留置されている。車窓からその姿を眺めた乗客も多いだろう。しかし、車両の長さや乗降用ドアの数が異なるため、03系が東西線で営業運転することはない。

 03系は日比谷線第2世代車両として、1988年に登場。日比谷線は北千住側で東武伊勢崎線北千住~東武動物公園間(現在は東武日光線東武動物公園~南栗橋間にも進出)、中目黒側で東京急行電鉄(現・東急電鉄。以下、東急)東横線中目黒~日吉間(のちに菊名まで延長)で相互直通運転が行われた。なお、東横線との相互直通運転は、2013年3月15日限りで打ち切った。

 1年後の2014年4月30日、東京メトロと東武が日比谷線新型車両の投入を発表すると、一部の中小私鉄が03系に熱いまなざしを注ぐ。1両18メートルは“小さ過ぎず、大き過ぎず”という、お手頃な車両なのだ。

 実際に03系を購入した熊本電気鉄道と北陸鉄道は、ホームの長さが18メートル車2両分に対応した駅が多い。

 しかし、予算等の関係から車両の更新が一斉にできない。加えて03系の先頭車は、モーターやパンタグラフを搭載しておらず、移籍先に合わせた改造も必要になることから、保管場所が必要になる。

 そこで車両の収容に比較的余裕がある東西線の深川検車区行徳分室に白羽の矢が立った。廃車後、トラックで配送され、1編成8両から2~4両に組み直した。「貯蔵品」という名目で、東京メトロの線路上に“復帰”したのである。

 今年7月9日時点、深川検車区行徳分室に2両車2編成、3両車1編成の計7両が留置され、新たなステージに立つ日を待っている。