採用した外国人がなかなか定着しない理由は何か?

 工場などの製造現場は慢性的に人手不足だ。実際、外国人労働者の集住地域*4 はその多くが工業地帯であり、外国人の就労によって生産活動が支えられている。「求人の成否」は企業の生命線にちがいない。

*4 身分に基づく在留外国人の多い県は、愛知県・静岡県・岐阜県・三重県など。(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「外国人労働者の雇用状況に関する分析」から)

伊藤 多くの経営者や工場長は、いろいろな手を打っても、「(日本人も外国人も)なかなか集まらない」という閉塞感を持っています。しかし、何らかの打開策を考え、実行しようというところまではなかなか至らないのも事実……人手不足解消のために何かを変えていく必要があるものの、そのアクションが見いだせないまま、「ただ待つだけ」といった企業さまも目立ちます。

 たとえば、民間の調査や独立行政法人労働政策研究・研修機構の分析レポート*5 でも、企業経営者や日本人の管理職が、外国人労働者の採用・育成・処遇に悩んでいる姿が見てとれる。企業における職場と外国人労働者を繋ぐ立場の伊藤さんはさらにこう続ける。

*5 2020年12月「外国人労働者の雇用状況に関する分析」

伊藤 「採用しても定着しない」という声をよく聞きます。その原因が、働き手(外国人)にあると思っていらっしゃる方が結構多いですね。「我慢が足りない」「仕事をコツコツできない」と。たしかにそのような傾向のある働き手もいらっしゃいますが「人手不足は雇用する側の問題」としてとらえたほうが解決の糸口が見つかると私は思います。定着しない理由でもある “労働環境”や“就労条件”を見直してみることが肝要でしょう。特に外国人については、「コミュニケーション」のハードルが高いですね。しかし、それも、“雇用する側のコミュニケーションに対する考え方”次第。「彼ら彼女たちとは文化が違うから…」「日本のやり方に合わせる気がまったくない」と嘆く経営者や工場長もいらっしゃいますが、雇用する側が譲歩していくことも大切。日本の慣習や難しい言い回しを外国人従業員にそのままぶつけ、「理解されない、ダメだ」とすぐに諦めるのはもったいない。発信する側の姿勢を少し変えることで、外国人の活躍の幅は広げられるはずです。