単純労働を続けていくか、キャリアアップしていくか

 今回の取材で伊藤さんのオフィスを訪ねてみると、万全な感染症予防のもとにGCCの多くのスタッフが出社勤務し、明るい表情で業務に向き合っていた。GCCの設置から2年あまりが経過したものの、これからやらなければいけないこと、進めていきたいことがまだあるという。

伊藤 推進していきたいことが二つあります。一つは先ほど言ったように、外国人を雇用する側の意識変革のお手伝いです。意識を変えることが、結局は企業さまのためになるはずですから。「できない。やらない。でも、人は欲しい」ということからのマインドチェンジです。まずは、弊社が数字とともに日本の労働市場の将来を語っていくこと。たとえば、「日本の労働力人口はこれから減っていき、御社の工場は3交代の勤務。夜勤があって、力仕事も必要なら、体力のある男性が比較的向いていますが、その世代の人口は少ないので、外国人に門戸を広げるべきです。そのためには~~」というようなお話をさせていただきます。人手不足を解消する方法としては働き手の条件を広げ、力仕事や夜勤のある業務には外国人にも活躍していただくことが不可欠です。「外国人とのコミュニケーションのハードルが高いことも事実。でも、それを乗り越えていきましょう」と伝え、企業さまを支援していきます。

 GCCのスタッフの一人で、母親が外国籍の大塚慶さんは、「外国人就労がOKの日本の企業でも、日本人と同じレベルの日本語使用を求められることが多い」と表情を曇らせる。また、ミランダ・ビニシウスさん(ブラジル出身)は、行政機関の手続きなどについて、「ステップが多過ぎる印象。一つの申請が完了するまでに3、4回のやりとりをしなければいけないのはナンセンス」と語る。たしかに、コミュニケーションのハードルは高そうだ。

伊藤 私たちが推進したい二つ目のことは、働く側(外国人の派遣スタッフ)のキャリアアップです。多くの外国人(派遣スタッフ)はビジネスレベルの日本語力が乏しいため、ホワイトカラーではなく、単純労働に従事して満足します。「今日、明日のお給料がもらえればいいや」といった姿勢です。しかし、日本で長く働き続けるにあたってはステップアップを視野に入れることも大切。「20代の外国人が日本に来て、工場で10年間・時給1200円で働きました……では、40代、50代ではどんなキャリアを描きますか?」と。キャリア開発のプランを「キャリアラダー」と呼びますが、はしごを昇っていくことにも価値があるので、キャリアアップを希望する方に対しては積極的にその方法を提案していきます。最初は単純労働で仕事につき、日本語をだんだんマスターし、たとえば、携帯電話の販売やショップ店員を経て、やがてはホワイトカラーの仕事に就くとか……そんな道筋を示してあげたいと思います。GCCのメンバーも、だいたいみんなが介護や製造業のアルバイトから始めていて、現在のデスクワークの仕事に就き、とてもいきいき働いています。