コロナ禍は、日本で暮らし働く外国人(在留外国人)にも大きな影響を与え、40万人以上が在留する技能実習生については、ネガティブな報道も目立っている。いま、技能実習生たちはどういう状況に置かれ、仕事(実習)にどのように向き合っているのか? 前稿「コロナ禍の「外国人技能実習生」の実態、フィリピン人実習生の悲しみと喜び」に続き、「オリイジン2020」の寄稿者であり、監理団体で技能実習生と日々コンタクトを続ける玉腰辰己さんに“現在進行形”を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「外国人労働者との付き合い方が、これからの企業の生命線になる理由」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

技能実習生たちと日本人の「国際交流」の先にあるもの

 前稿で触れたとおり、外国人技能実習制度*1 は、先進国としての日本が、国際社会の調和のために、開発途上国の経済発展を担う「人づくり」を目的としている。労働力不足の解消のためではなく、あくまでも「国際貢献」の位置づけだが、「国際関係論」で博士号を持つ玉腰さんの目線から見た「技能実習制度」はどのようなものか。

*1 厚生労働省「外国人技能実習制度について

玉腰 技能実習制度は、いまもっとも注視が必要な「国際交流」のひとつだと思います。

 どういうことか。ちょっと俯瞰的な、大枠なところからお話しします。

 まず、一般的に「国際関係」と思われているものは、次の四つに分けられます。

1. 政府の外交関係(例:日本の首相と米国大統領、日本の外務省と中国の外交部)
2. 国際機関の協力関係(例:国連、WHO、IMF)
3. 一国の政府が他国の国民に宣伝を展開する「広報外交」(例:国際交流基金、孔子学院、ブリティッシュ・カウンシル)
4. 民間関係

 1から3までは、外務省や国連で働くわけではないわたしたちにとっては、「マスコミでは見るけれども自分には力の及ぼしにくい」――いってみれば、普通の人には縁遠い世界です。

 しかし、四つ目の「民間関係」は、わたしたち自身が当事者になりえます。グローバル化の進んだ世界では、たとえその片隅であっても、知らず知らずのうちに関わっていたりするところです。

「民間関係」には、さまざまな交流が含まれます。ビジネスの交流、大学など知的分野の交流、ポップカルチャーでつながる大衆文化交流、インバウンドの旅行者への“おもてなし”、地域に住む外国人との交流(いわゆる「内なる国際化」)などなど、さまざまです。

 わたしたちと技能実習生や外国人留学生とのつきあいも「交流」にあたります。

 技能実習生の大半は、人手不足に悩む中小零細企業に入ってきます。

 実習生を受け入れる日本側の人たちは、大学で国際交流を学んだとか、外国語や外国文化を専攻したとか、留学を経験したという人は稀(まれ)で、異文化間の媒介役のトレーニングを受けたり、経験を積んだりした人もほとんどいません。そこが大学などに在籍する外国人留学生の環境とは決定的に異なります。実習生を迎え入れた日に初めて外国人と接し、心の準備もないまま、いきなり素のままで始まる「国際交流」なのです。

 そのように始まる「国際交流」の数年後、実習生たちが母国に帰ってからのことを一度想像してみるといいと思います。母国に帰って、周囲に「日本はどうだった?」と聞かれた彼ら彼女たちは、素のままの本当の日本の印象をどのように答えるでしょう。

 もし、日本人が技能実習生や留学生を冷遇していたら、その先にあるのは、日本に対する国際的な草の根の悪評です。もし、笑顔で接し合える関係を築けていたら、彼ら彼女たちはきっと「日本は良い。日本人はやさしかった」と広めてくれるでしょう。その先にあるのは、新たな、次の世代の良好な関係でしょう。

玉腰辰己 Tatsumi Tamakoshi

1966年愛知県生まれ。日本大学芸術学部卒業。西武百貨店、ギャガ・コミュニケーションズ、上海・台北・シンガポール留学、日本語教師、笹川平和財団研究員、聖心女子大学非常勤講師などを経て、2019年から岩手・盛岡に移住し、外国人技能実習制度の監理団体で実習生受入企業の監査を担当している。博士(国際関係論、早稲田大学)。共著に『日中関係史 1972-2012 III 社会・文化』(東京大学出版会)、『証言 日中映画興亡史』(蒼蒼社)がある。国際関係でも政府間関係より社会間関係に関心があり、外国人労働者とこれからの日本社会のあり方を探求している。