「多くの人にとって英語は何かを達成するための道具であり、目的ではないはずです。しかし、日本の英語学習はその点が曖昧。まず自分が何において熟達したいのかを明確にし、そのなかで英語はどういう役割を果たすのかを考えるべきです。それによって訓練も変わってきます。試験に合格するためにはそれに最適化された教材で試験対策をすることはある程度効果的だとは思いますが、ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」

 今井氏は言語と思考の関係、子どもの母語習得のしくみなどを長年研究してきた。同氏は「合理的な学習法の提案」と「その理由としくみを解説する」ことに本書では主眼を置いている。

 カギとなるのは「スキーマ」という概念だ。

「スキーマは『知識のシステム』というべきものですが、多くの場合、持っている意識はありません。例えば、子どもや外国人が話す日本語に違和感を抱くのはスキーマによるものです。しかし、その違和感をすべて言語化することはできない。このように言語のスキーマは、ほとんど言語化できませんが、無意識にみなさんアクセスしています。英語にも同様のスキーマがありますが、日本語スキーマとの間に多くのずれが存在している。このずれを理解し、英語スキーマを獲得することが英語上達のカギとなるのです」

 可算名詞と不可算名詞、aとtheの運用なども英語スキーマを獲得している人は無意識に使い分けられるが、日本語スキーマから切り替えができないと、非常に苦心するのだ。

英語記事を熟読し
著者の意図を深掘りする

 ビジネスにおいて、英語でメールやレポートを書き、ミーティングなどを行う人も多いだろう。英語スキーマを身につければ、当然、その質は向上する。

 そのためにどうすればいいのか。