スタンフォード大学の行動科学者であり、スタンフォード大学行動デザイン研究所の創設者兼所長が20年かけて開発した「人間の行動を変える衝撃メソッド」を公開した『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著、須川綾子訳)が刊行となった。本国アメリカではニューヨーク・タイムズ・ベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、すでに世界20ヵ国で刊行が決まっている。
「ダイエット」「勉強」「筋トレ」といった日々の習慣を身につける方法から、悪習をやめる方法、さらには「他人の行動を変える」方法まで、行動の変化に関するあらゆる秘訣を網羅した驚異的な一冊だ。
著者はそれがどんな種類の行動であれ、すべて「能力・モチベーション・きっかけ」の調整によって変化を起こせると説く。本書の理論を頭に入れれば、今後の人生においてとても大きな武器となり財産となるはずだ。本稿では本書から特別に「人生を変える方法」を紹介する。
【その1】「人生の終わり」を意識する
2016年のある日、私は乗っている飛行機が墜落する夢を見た。
機内では何もかもが揺れていただろうか。隣の乗客は私の腕をつかんでいただろうか。
叫び声が響いていたか。そうかもしれない。だが私の記憶にあるのは「自分はもうすぐ死ぬ」という感覚だけだ。
しかしどういうわけか、恐怖に囚われることも、パニックに襲われることもなかった。そして残念ながら、人生の最高の瞬間の記憶がよみがえることもなかった。
代わりに私を満たしたのは深い後悔だった。これまでに得たたくさんの知識が失われてしまう。恐るべき死が目の前に迫っている状態で脳裏をよぎったのは、自分が研究し続けてきた行動変化に関する真実を説明する義務を果たせなかったという思いだけだった。
夢だったと気づいて、こう思った。
「ああ、なんてことだ。飛行機事故で死ぬというときの私の反応はこれなのか?」
私は夢の意味を理解した。私は自らの知識を広く伝えなければならない──それもいますぐに。世界に広める手段が必要だ。
私はすでに何年も前から本を書くつもりだったが、ほかのプロジェクトに追われて時間がないと思っていた。
スタンフォードでは行動デザイン研究所を運営し、毎年新しい講座を担当し、ビジネス界のイノベーターたちを教え、つねに6件ほどのプロジェクトを抱えていた。
あの夢は「警鐘」だった。私の研究の中で世に知られているものはほんの一部にすぎなかった。また、すでに公表していた行動デザインの研究成果も、アクセスしやすいとはいいがたかった。