総裁選のカギとなる
河野太郎氏が出馬する可能性は?

 岸(信介)内閣の時は池田勇人が出てきたし、田中(角栄)内閣の時は、何と、閣僚だった三木武夫や福田赳夫らが、こんな内閣でやれるかと辞任し、総裁の後継に名乗りを上げた。海部(俊樹)内閣の時は、小選挙区導入反対派の山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎のいわゆる「YKK」を中心に党内から倒閣運動が起こった。小泉さんはその後、「自民党をぶっ壊す!」と言って総裁選に出馬したね。こういう人が今は出てこない。

――熱意や信念のある政治家が減ったのでしょうか?

 僕は今の選挙制度に問題があるのだと思う。小選挙区制では、選挙に当選するためには、自民党執行部の公認が必要だ。そのため、公認権を握る自民党執行部の力が強まり、派閥が弱まった。結果、自民党議員は安倍さんや菅さんのイエスマンばかりになってしまっている。皆、ゴマをすってばかりだ。

 僕は第2次安倍内閣の時に、当時の幹事長だった石破さん(石破茂衆議院議員)に、このままでは自民党内で政策に関する健全な論争が起こらない。元の中選挙区制に戻すべきだと言った。でも石破さんは消極的だった。中選挙区制はあまりに金がかかりすぎると。

 その後、次の幹事長の谷垣さん(谷垣禎一元自民党総裁)にも伝えた。中選挙区制とは言わないが、選挙制度は変えるべきだと。その時、谷垣さんは、その通りだ、変えましょうと言った。でもその2カ月後、僕に会いたいと言う。会って話を聞くと、選挙制度を変えることには与党も野党も反対だ、彼らは今の選挙制度で当選しているから、下手に変えたくないのだと言う。その後、谷垣さんはけがで辞任することになり、二階さんが幹事長となった。

――総裁選には8月26日時点で岸田前政調会長が立候補を正式に表明、また、高市早苗前総務相も出馬に意欲を示しています。安倍前首相が高市氏を推す可能性はあると思いますか?

 あると思う。

――田原さんは、「ポスト菅」に河野太郎行政・規制改革相の名前を挙げていますが、次期総裁選に河野氏が出馬する可能性についてはどう思われますか?

 河野さんは非常にまじめで、変に政治的な駆け引きもしないし、「自分のために」という私心もない。それを周囲の人がわかっている。だから菅さんは新型コロナウイルス感染症対策担当大臣に任命した。好き嫌いではなく、党内でもっとも信頼できると思ったのだろう。

 菅内閣が力を持ったまま終わるのであれば、菅さんも二階さんも河野さんを推すだろうから、そこであえて河野さんが総裁選に出ることはないはずだ。でも、このまま菅内閣の支持率が上がらず、安倍さんや麻生さん(麻生太郎元首相)が菅内閣を見限ることになれば、出馬する可能性はあるのではないか。