田原総一朗の覧古考新「日本はあいまいにしてきた有事を『初めて』真剣に考えなければいけない時期にきた」 Photo by Teppei Hori

「日本はあいまいにしてきた有事を『初めて』真剣に考えなければいけない時期にきた」。稀代のジャーナリスト・田原総一朗氏はこう述べる。緊急事態宣言の延長、IOCバッハ会長の来日延期、国際的なワクチン獲得戦争の敗北、緊迫化する東アジア情勢と懸念高まる台湾有事、広がる日本国憲法の改正論議…。あまたのキーパーソンに直接コンタクトを取ってきた田原氏の見解は?(聞き手/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光)

緊急事態宣言が延長に
IOCバッハ会長は来日を延期

――東京、大阪、京都、兵庫の4都府県の緊急事態宣言が5月末まで延長、そして愛知県と福岡県、さらに北海道、岡山県、広島県も対象地域に加わりました。

田原総一朗田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。1960年に早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年、東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」等でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「城戸又一賞」受賞。早稲田大学特命教授を歴任(2017年3月まで)、現在は「大隈塾」塾頭を務める。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 Photo by Teppei Hori

 実は医療の専門家たちはもともと、(当初の予定だった)2021年4月25日から5月11日までの17日間では感染拡大を抑えるのは無理だと、批判的だった。

 それに反して政府が当初5月11日までとしたのは、IOCのバッハ会長が来日し、広島訪問後、オリンピック関係者と会議を行う予定だったからだ。そこで開催の有無を最終的に決めることになっていたので、それまでに、感染者数を明確に減らして何とか緊急事態宣言を解除しておきたい。このように考えていた。

 しかし、日本政府は緊急事態宣言を延長することを決めた。それを知るとバッハ会長は来日を見送ることにした。

 来日が(中止ではなく)仮に延期だとすると、緊急事態宣言が5月31日まで続くわけだから、来日は6月となり、IOCと日本側の会談も6月となる。6月に会談をして7月の開催が果たして可能だろうか。

――さまざまな意見はあるにせよ、とにかく開催はするだろうという見方もこれまで多くありましたが、ここに来て雲行きが怪しくなってきました。

 メディアの世論調査では約6~7割の国民が開催について中止または再延期すべきだと答えている。開催に賛成という意見が一向に増えない。さらに国際社会からも「中止すべきだ」という論調が増えてきている。