「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。
総裁選って、どうやって進めるの?
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の延長、国内外情勢のさまざまな変化の中、自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)の話題も増えてきました。
しかし、「総裁選って、どんな仕組みかよくわからない…」という方も多いのではないでしょうか。正直言って私自身も、政治や選挙のしくみについて、たとえば「小学生にわかりやすく説明できるのか?」と聞かれると、言葉に詰まってしまいます。
しかし、とっつきにくいこと・難しいことを易しくわかりやすくするのが図解の役目。今回は、自民党総裁選の仕組みをテーマに、わかりやすい図解を作成する方法を解説していきます。途中、「やっちまった図解」の例も交えますので、「どうすればよくなるのか?」を考えながら、読み進めていただければ幸いです。
<参考記事・資料>※題名クリックで、記事に飛びます
●【詳しくわかる】自民党総裁選2021
●総裁選「9月17日告示・同29日開票」で決定
●Wikipedia:自由民主党総裁選挙
まず、図解のベースとして「【詳しくわかる】自民党総裁選2021」を参考にしました。
【詳しくわかる】自民党総裁選2021
総裁選挙の日程と仕組み
今回の自民党総裁選挙の日程は9月17日告示、29日投開票と決まりました。
安倍前総理大臣の辞任に伴う去年9月の選挙では実施されなかった党員投票が3年ぶりに行われる“フルスペック”の総裁選となります。
「国会議員票」と「党員票」は同数で、国会議員1人1票の「国会議員票」383票と、全国の党員・党友による投票で配分が決まる「党員票」383票の、合わせて766票で争われる見通しです。
「国会議員票」は9月29日に東京都内のホテルで投票が行われ、その場で開票されます。
一方、党員投票は党の規程では、去年までの2年間、党費を納めた党員に選挙権が与えられることになっていますが、3年前の総裁選挙と同様、今回も特例で、去年1年分の党費を納めた党員にも与えられます。
全国の自民党員は去年末の時点で113万人余りで、今回、投票できる党員もほぼ同数になるものとみられます。
投票は来月28日に締め切られ「党員票」は、各都道府県連が集計した得票数を党本部でまとめ、いわゆるドント方式で候補者に配分されます。
そして「国会議員票」と「党員票」を合わせて、有効票の過半数を得た候補者が当選となります。
『【詳しくわかる】自民党総裁選2021』より
==抜粋終了
※この内容を参考にしつつ、「過半数に届かなかった場合の決選投票」については、【Wikipedia:自由民主党総裁選挙】と【総裁選「9月17日告示・同29日開票」で決定】を参考にしました。
時系列での変化や手順を図で説明する場合、上から下に流れる形にするか、左から右へ流れる形にするかで悩むことが多いのですが、そんなときは「図を掲載する面の比率」も判断材料となります。
例えばスライドや動画に掲載する場合は、横長で示す必要があることも多く、左から右へ流れる形が見やすくなります。今回の仕組みも左から右に流れる形で作成してみます。
最初は文章の中のキーワードを書き出しながら、下書きをします。この段階では自分が読める程度の走り書きでも大丈夫。アイデアを形にすることが第一です。一つの考えに固執せず、「他に良い表現はないか?」を探りながらどんどん書き出していきましょう。
「当選」を一番上に配置してみた!
「当選」にハイライトを当てる、そんなプローチもありそうです。「当選」という結論を図の一番上にして、その投票数の説明を下に配置してみたら?
まずは全体の向かって左に「立候補」、右に「当選するまでの流れ」を配置しその頂上に当選という項目を置く形を試しました(下図参照)
さて、いかがでしょうか? パッと見た目はいかにも図解! という感じの図に仕上がりましたが…。
「下から上へ視線を動かすためか、内容が頭に入ってこない」「知りたい情報を探すたびに視線があちこちに飛んでしまう」という声が聞こえてきそうです。作った本人しか理解できない「やっちまった図解」、どこが残念ポイントなのでしょうか。下図を見てください。
見て欲しい順番は赤い点線の順番なのですが、この図では、決選投票を決める基準などの「比較したい項目」の距離が遠かったり、矢印の向きがスムーズにつながらなかったりと、よかれと思って「当選」を目立たせたつもりが、見る人を迷わせる図になっています。それでは、残念ポイントを改善してみましょう。
目指すは「視線に逆らわないシンプルな流れ」
左から右への視線の自然な流れを意識して作成してみました。さて、検証してみましょう。下図を見てください。
流れで迷うことはなくなりましたが、シンプルさを意識しすぎてひとつのブロックの中に情報が詰め込まれている印象です。これもまだまだ「やっちまってる」図なのです。その残念ポイントは…下図を見てください。
流れに集中し、要素をまとめすぎたために、一つ一つのブロックが「よく読み込まないとわからない」状態になっています。
ブロック内の要素が長文だったり文字の表記にメリハリがないとスピーディに内容を把握できません。また、文字のヨコ組み(左から右に読む)と文字のタテ組み(上から下へ読む)は一つの図の中に混在しないほうがスムーズです。特に、タテ組が2行以上になると、右から読み始めるため、視線の流れを妨げる要因になります。