3万円あれば
誰でもコレクターになれる

 レア盤探しに奔走するコレクターも多く、“お金がかかる趣味”というイメージも根強いレコード収集。この10年ほどで市場価格が上昇しているとはいえ、現在でも100円ほどで売りに出されている中古盤は多く、レコードプレイヤーはかつてに比べて安価で手に入れられるため、「初心者がレコードを趣味にするために必要な初期費用は3万円で十分」だと加藤氏は語る。

「近年はブームの影響を受けて、AV機器メーカー各社はレコードプレイヤーの製造に力を入れており、1万円台で本格的なものが購入できます。アナログ盤独自の臨場感のあるサウンドを味わうためにはスピーカーも大事ですが、こちらも1万円ほど予算があれば十分高音質な製品が手に入る。機材をそろえるのに2万円使って、残りの1万円を握りしめ、中古盤屋の100円コーナーに足を運べば100枚は買えるわけです。この時点で立派なレコードコレクターですよ」

 本書で紹介されている1000枚のドーナツ盤のほとんどは、100~1000円ほどで入手可能な有名曲ばかり。1枚数万円もするレア盤のみで構成することもできたが、あえてそうしなかった。

「本書を手に取ってくれた人には、気になったレコードを実際に購入して、楽曲を聴いてほしいという気持ちが根底にあります。“レア盤を自慢する”、マニア向けの本とは一線を画したかったんです。レコードはCDやストリーミングでは切り捨てられてしまう可聴領域(人間の耳が聴き取れる音の範囲)の外にある音も再生するので、コンディションによっては歌い手の息遣いまでリアルに感じられ、見知った曲でも新鮮な響きを帯びる。レコードの良さを味わったことがない人は、本書をガイドにぜひ一度体感してほしいですね」

 CDに比べるとサイズが大きいことに加え、複製がしづらく、曲を再生するのに手間がかかるレコード盤。かつては弱点であったこれらの特徴が、ストリーミングサービスが普及した現在、ポジティブに評価されている。その奥深い世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。