近年、会社や事業を取り巻く経済環境の変化が激しくなったことで、素早い決断や行動がこれまで以上に求められる時代になった。いつまでも決定を先延ばしにしていると、ライバルに先手を取られたり、あっという間に世の中の動向に後れをとったりしかねないからだ。
しかし、必要な情報を収集して頭を整理しても、いざ決断・実行の段になると一歩を踏み出すのが難しいのも事実だ。「行動しようと思っても、つい迷ってしまう」「やるべきことをためらいがちだ」という悩みを抱えている人は多いだろう。
そこで参考になるのが、誰でも「即断即決、即実行」ができるようになる効果的なコツをまとめた『ゼロ秒思考[行動編]』(赤羽雄二著、ダイヤモンド社刊)だ。本書は、累計34万部を超えるベストセラー『ゼロ秒思考』で紹介した「メモ書き」をベースに、ビジネスパーソンの「行動力」を高めることに力点を置いた1冊で、いまの時代に必要不可欠なスピード感のある「決断力」と「実行力」を身につけるためのノウハウを丁寧に解説している。
SNSでは「今すぐ行動できるようになった」「自分の成長を感じられる」とトレーニングの効果を実感している人々の声が相次いでいる。
今回は 『ゼロ秒思考[行動編]』より一部を抜粋・編集して、「即断即決、即実行」を阻んでいる心理的ブロックを乗り越える方法を紹介する。(構成/根本隼)
即断即決、即実行を阻む「心理的ブロック」とは?
多くの人はなぜ即断即決、即実行ができないのか。それは、心理的なブロックがいくつもあるからだ。即断即決、即実行できないのが「どうしていいかわからない」ときであっても、「本当はわかっているのに直視したくない」ときであっても、妨げになっているのは、端的に言えば「不安と恐れ」だ。
1番大きい理由として、「情報を集めきらないと不安、怖い」ということがある。本当はとっくに結論を出せるはずなのに、情報を集め続ける。もっとこの情報、あの情報がほしいと、集める作業をやめることができない。もちろん、その間は結論と行動を先延ばしにする。
情報を集めれば集めるほど正しい結論を出せるのであれば意味はあるが、そういうケースはほとんどない。多くの場合、すでに十分な情報を集めているか、もうよい情報はなくなり、結論の精度は上がらない状況になっている。より正しい結論を出すためではなく、結論を出したくないばかりに、あるいは仕事をしていると思い込みたくて情報を集め続ける。
問題は、本人だけではなく周囲もそれを許してしまい、情報を集め続ける状況が続いてしまうことだ。実際は、情報を集める時間だけではなく、情報を集める費用も無駄であり、チームに、組織に迷惑がかかる。アクションが遅くなることによる機会損失も大きい。情報収集が役立つどころか、害にすらなってしまう。
短期間に絞って情報を集める
こうした状況の解決には、よい方法がある。簡単すぎて申し訳ないが、それは、短期間に限って情報を集めることだ。ものによって期間は変える必要があるが、数時間、数日間、あるいは長くても1~2週間程度で十分と考えよう。情報の「量」ではなく、情報収集の「時間」で管理するということだ。
新たな情報で判断の基軸が右にぶれたり左にぶれたりするときは、まだ検討不足、情報不足と考えてよい。しかし、期限内であっても、新たに得られる情報によってもう判断が揺るがないとき、特に判断のための新たな「軸」が増えないときは、もう今ある情報だけで判断すべき時期だ。
頭が整理できずパンクしてしまう
即断即決、即実行できない理由として、「すぐ頭がいっぱいになってしまう」という人も多い。どういうことかというと、頭が整理されておらず、あらゆることが気になっていて、あるいは一部の評価にとらわれ過ぎていて、それ以上考えることができなくなっている状況だ。必然、何をすべきかという選択肢のリストアップも、その評価も中途半端になる。
決断し、行動しなければならない段階になっても、選んだ施策を実行したときの周囲の反応が気になってしかたがないし、過去の失敗が走馬燈のように浮かび上がってくる。「あれもやらなければ」「これ何とかしなければ」と気にするあまり、1つ1つを片付けていくことができない。即断即決以前の問題として、まともに判断することができなくなってしまう。どんどん悪循環が拡がっていく。そうなると、余計に頭がいっぱいになり、即断即決、即実行など到底できない状況になる。
「メモ書き」を継続すると頭がクリアになる
どうしてこういうことが起きてしまうのだろうか。頭が悪いとかそういうことではなく、不安で自信がないので、状況を分けてとらえたり、順序だてて考えたりすることに関して苦手意識が強すぎるのだ。
この解決には、まずは『ゼロ秒思考』で説明したA4一枚の「メモ書き」(注)をお勧めしたい。頭がいっぱいになったと感じたら、すぐに「メモ書き」で整理をしてみる。『ゼロ秒思考』で解説したやり方で毎日続けていけば、どんどん頭はクリアになっていく。
「失敗したらどうしよう」とやる前に悩む
「やってだめだったらどうしよう」ということが気になって、即断即決、即実行ができない人もいる。確かにいつも成功するとは限らない。失敗することも当然ある。難題であればなおさらで、サボらず、最善と考えられる努力を重ねても、一度や二度は必ず失敗すると言ってもよい。むしろ、その失敗からの学びが、成功のきっかけになる。
それに、仕事で果敢に挑戦してうまくいかなかったとしても、会社は意外に高く評価するものだ。ほとんどの経営者は、そういう挑戦をしてくれる社員があまりに少ないので、ぜひやってほしい、とすら思っている。
それでも失敗が怖い、という人もいるかもしれないが、それ以上に、「何もやらなくて放置したらどうなるか」ということも冷静に考えてみてはどうか。
その結果、本当は放置しておいてよい問題だと気づくこともあるだろう。しかし、放置できないと思えたなら、やはり即断即決、即実行で対応すべきだ。少なくとも、やる前に悩んでしまい、そこで止まってしまうのは、本当にもったいないとしか言いようがない。
(本原稿は、『ゼロ秒思考[行動編]』から一部を抜粋・編集したものです)