高宮 二つ目の「ライブ配信」の話の中でも言ったのですが、「配信コスト」が安くなったから、「マイクロエコノミー(小さな経済圏)」でも、スタートアップが動画配信をすることができるようになり、十分に採算が合うようになりました。つまり、「コストが安価になる・変動費化する」ということがテクノロジーの発達で“イネーブル”しました。

 同時に、もう一つテクノロジーで“イネーブル”したのが、「マネタイズ効率が上がった」こと。こちらは、売り上げサイドで、「マイクロエコノミーでも成り立ちやすく」しました。

「モノ消費」の時代は、ある一定の「パッケージ化されたモノ」に対して、「決まった値段」をみんなが払っていました。デジタル化が進み、「アイテム課金」以降は、ユーザーが「自分の実感した価値に見合う額」を払えるようになりました。すなわち、個別ユーザーに対して、「最適化・最大化した価値」をきちんと受け取れるようになりました。

 ということで、「パッケージ販売」だと、ライトユーザーやヘビーユーザーに対して、一律で「同じ値段」で提供していました。それに対して、「アイテム課金」以降は、「パッケージ販売より安価」から始められますし、「逆に多くの対価」を頂くこともできるようになりました。

尾原 つまり、ライトユーザーは「手軽な価格」で、場合によっては「無料」でお試しできる、その一方で、たくさん使いたいヘビーユーザーは、「多くのお金を払うことも」できるということですね。

高宮 そうすると、パッケージ販売のときよりも、トータルでもらえる対価が多くなります。

尾原 今まで「ロスしていた部分」が顕在化しますね。例えば、コンサートチケットを「1万円」しか払っていなかったけど、「10万円」払いたいというヘビーユーザー向けに、課金ができるということですね。

高宮 さらに、「アイテム課金」の先に「投げ銭」みたいな話があります。今までのパッケージの価格は「コストベース」でした。今では、個々人が実感する「価値ベース」の価格も、しっかりと受け取るという流れが、テクノロジーによって“イネーブル”されたのだと思います。

 前回にお話しした、「ユーザー側の3つのトレンド」の背景には、「コスト側」と「マネタイズ側」のイネーブルがあって、全体がまとまっているという感じです。

個人が大きな力を持つ「プロセスエコノミー」が成立するワケ筆者作成