高いPERの銘柄は
どう理解すればよいのか
さて、皆さんの中には、日本株全体のPERが14~15倍程度なのに、PERが50倍や100倍の銘柄を目の前にして、「なんでこんなに高いPERがついているのだろうか?」と思われた経験がある方も多いのではないでしょうか。こうした背景も、先の計算式を思い出していただけるとすぐに理解できます。
仮にrが7%だったとしても、gが5%であれば、r-g=2%となり、PERは50倍になります。また、gが6%であれば、r-g=1%となり、PERは100倍になります。
それぞれ、利益が永久に毎年5%、6%で成長していくという「実現するにはハードルが極めて高そう」な前提となっており、「そんな前提、実現できるのか?」と考える人も多いのではないでしょうか。
これは実は、現在の利益を前提にしていることで理解しにくくなっているのです。こうした高PERの銘柄の背景についてもう少し踏み込んで見ていきましょう。
先ほどの(1)の式と(2)の式より、以下のように表現することができます。
株価=1株当たり当期純利益÷(r-g) ……(3)
ここで1株当たり当期純利益が100円、rが7%、gが0%の企業を考えてみましょう。つまり、この企業の当期純利益は永遠に100円ということになります(ケースA)。
そうすると、この前提の理論株価は以下のように計算できます。
100÷7%=1428.57円
つまり、PERは1428.57円÷100円=14倍ということを意味します。
この前提が正しいとするなら、株価がこれ以上の水準で市場で取引されていれば売りになりますし、この水準以下の株価がついているのならば買いとなります。
さて、上では、利益成長がない企業の場合についてみてみましたが、今度はガンガン利益成長する企業について見てみましょう。
ここでは、将来の当期純利益を前提として、冒頭に触れたインカムアプローチを使って理論株価がいくらになるのかを見ていきます。
実績の当期純利益が100円だったとして、その後も利益が変わらないケースA、最初の5年間は毎年利益が20%伸びるケースB、もう1つは、最初の5年間は毎年利益が50%伸びるケースCについて見てみます。
ケースB、Cとも、6年目以降は、5年後の利益水準で横ばいとなり、それが100年後まで続くというシナリオを置くとしましょう。
以下は、各ケースにおいて、今後5年間と6年目以降の1株当たりの当期純利益の推移を示したものです。
割引率は先ほどのケースと同様に7%とします。それぞれの年度の1株当たりの当期純利益に対して割引率を使って現在価値を計算し、合計すると、ケースAは1427円(先ほどの計算では1428円でしたが、この差額は、永久で計算したか100年間で計算したかによる違いです。誤差程度なので無視でもよいでしょう)、ケースBが理論株価は3245円、ケースCが9262円となります。
また、実績の1株当たり当期純利益が100とすると、それぞれ実績値を使ったPERは32倍、93倍になります。こう見ると、高成長率を実現できそうな場合には、株式市場全体と比較して極めて高いPERでも正当化されることになります。