噂が誤っていても関係ない

 そうなると、例えば候補3が審査員に賄賂を贈っているから候補3が勝つだろう、という噂が出回っているとする。噂を信じた審査員たちが候補3に投票するだろうから、候補3が優勝する可能性は高いだろう。

 さて、審査員の一人が候補3の親友だとして、彼(または彼女)はどうすべきであろうか。「自分だけは真実を知っている。候補3は賄賂を贈っていないので、噂は誤りである。したがって、自分は候補3には投票しない」などと考えるようでは、賞品にありつくことはできない。

 他の審査員が誤った噂を信じて候補3に投票するだろう、という情報が得られたならば、自分も候補3に投票する方が、賞品にありつく確率が格段に高まるわけだ。

 つまり、美人投票の世界においては、真実を知っていることの意味は非常に小さく、噂に敏感であることの意味が非常に大きい、というわけだ。

 冒頭、本稿は長期投資には関係ないと書いたが、その理由がこれである。人の噂も七十五日であるから、75日以上の投資期間を考えている場合には他人の噂ではなく真実を知ろうとすべきであり、75日以内に売り抜けようと考えているのであれば真実よりも他人の噂を重視すべきだ、というわけだ。

 美人投票の最たるものは、金融政策の株価への影響であろう。ゼロ金利下で金融緩和をしたからといって、世の中に資金が出回るわけではないし、株価が上昇する理由は特にないが、皆が「金融が緩和されれば株価が上がる」と信じているので、その通りのことが起きる、というわけである。

 金融緩和で株価が上がると投資家たちが信じているときに、金融緩和がされると実際に株価が上がり、それが投資家たちの信念を強化するので、次の緩和のときにも株価が上がる、ということで、同じことが過去からずっと行われており、今後も行われていくのであろう。

 金融政策の株価への影響については、大変重要であるので、別の機会に詳述することとしたい。

 本稿は以上であるが、当然ながら投資は自己責任でお願いしたい。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、わかりやすさを優先しているため、細部が正確でない場合がある。