「仕事ができる人は、一文が短い」「一文を60字以内にすれば、書き手も読み手もラクになる」。そう話すのは、コピーライターとして30年以上活躍し続ける田口まこ氏だ。花王、ライオンなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラなどの化粧品を中心に、多数の広告コピーを手がけてきた。その田口氏が、伝わる・結果が出る文章をラクに書くコツを紹介した『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』が9月29日に発売となる。メール、チャット、企画書、営業・プレゼン資料、報告書など、さまざまな場面に生きる、シンプルだけど効果抜群の文章術とは? 今回は、本書の内容を一部抜粋して紹介する。
「あ・い・う・え・お」で気持ちまで伝わる
チャットのやりとりでいつも感じるのは、「短かすぎて、印象の良い文をつくるのが難しい」ということです。
「はい」「わかりました」「了解です」など、短い言葉だけでは、どうしても冷たい印象になります。自分にその意図がなくても、相手の気分を害してしまうこともあるでしょう。そんなときに便利なのが、顔文字やスタンプです。
しかし、仕事での使用には賛否両論があります。気心の知れているメンバーならまだしも、クライアントや目上の方が参加する場ではなかなか使えません。
このまま送るとぶっきらぼうな印象になるかもしれない。そう思ったら、文頭に「あ・い・う・え・お」をつけて、気持ちを上手に文章に乗せましょう。
たとえば、「あ」だと次のように使います。
●いいですね
→あ、いいですね
あるとないとでは大違いです。パッと見て、AよりBのほうが気持ちを込めて「いいですね」と言っているように感じられます。「あ、」はちょうどいい相づちとなり、気持ちをパッと伝える顔文字のような効果を生むのです。
あ行の言葉の不思議なチカラ
実はあ行の言葉には、すべて同じような顔文字効果があります。
●そうなのですね
→えっ、そうなのですね
「えっ、」があることで、相手の話に興味を持っていることが伝わります。言葉の共感性が高くなるのです。チャットのやりとりを想定すると、いっそう「あ・い・う・え・お」の顔文字効果がわかります。
●「来週中に予算案を出してもらえますか?」
「来週中は難しいです」
→「来週中に予算案を出してもらえますか?」
「うーん、来週中は難しいです」
「難しいです」だけではあまりにもそっけなく、少し傲慢な印象を与えます。こんなとき、仲の良い人とのやりとりなら、きっと文末に困ったふうの顔文字をつけるでしょう。「うーん」と入れることで、その顔文字と同じ効果が生まれます。検討し、悩んでいるのが伝わり、悪い印象を相手に与えません。
リアクションも同様です。「ええ!」「おお!」などとつけるだけで、言葉に感情が宿ります。次の例文であれば、より成功を喜んでいることが伝わるでしょう。
●「企画が無事採用されました!」
「よかったです」
→「企画が無事採用されました!」
「おお! よかったです」
このように、「あ・い・う・え・お」をプラスすることで、気持ちが増幅して伝わります。これで顔文字に頼らなくても、短いフレーズから受ける冷たい印象を払拭できるのです。
ちなみに、これは会話でも役に立ちます。
「おお、それはすごいですね」
「あっ、なるほど。よくわかりました」
このように、会話でも「あ・い・う・え・お」をプラスすれば、より気持ちが伝わります。相手も気分よく話を続けられるでしょう。
(本原稿は、田口まこ著『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』からの抜粋です)
京都府出身。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)美学美術史学科卒業後、一般企業を経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社、コピーライターとなる。大塚製薬「ポカリスエットステビア」「カロリーメイト」などを担当し、「ジャワティ」の雑誌シリーズ広告で、コピーライターの登竜門「東京コピーライターズクラブ新人賞」受賞。その後フリーランスとなり、女性向けの商品広告を中心に活動。ライオン、花王、P&Gなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラ、ランコム、フローフシ、ロート、ファンケルなどの化粧品のコピーを多数手がけ、現在も第一線で活躍中。コピーライター歴は30年以上。著書に『短いは正義』『伝わるのは1行。』(かんき出版)がある。東京コピーライターズクラブ会員。