9月21日、三菱UFJフィナンシャル・グループは傘下の米地銀、MUFGユニオンバンクのリテール(個人・中小企業)事業を売却すると発表した。伝統的な米国のリテール事業の売却は、海外事業の岐路を印象付けている。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
三菱UFJの米国事業は
リテール事業を手放し“片翼”に
「世界で最も大きく、そして最も古くさいマーケットだ」(メガバンク幹部)
金融大国である米国。その巨大な市場の利益を取り込むべく、3メガバンクグループの一角である三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、“両翼”で攻め込んでいた。持ち分法適用会社のモルガン・スタンレー証券が担う投資銀行と、子会社のMUFGユニオンバンクが担う商業銀行だ。
しかし、三菱UFJFGが9月21日に打ち出したのは、2枚の翼のうち1枚を手放す大胆な事業再編だった。保有するユニオンバンクの全株式を、競合先である米大手地方銀行のUSバンコープに売却すると発表したのだ。
そのうち、大企業向け事業や市場事業は三菱UFJ銀行の米国支店などに事前に移管するため、結果として手放すのは、ユニオンバンクが手掛けるリテール(個人・中小企業)事業となる。株式売却後、今度は三菱UFJFGがUSバンコープの株式2.9%を取得した上で、資本業務提携を持ち掛ける考えを示している。
開示資料によると、ユニオンバンクのリテール事業は、粗利益ベースで米国事業全体の約3割を占める。事業規模もさることながら、伝統や独自性の面でも、三菱UFJFGの米地銀ビジネスは他の邦銀にはない存在感を放っていた。
歴史をさかのぼると、1970~80年代にかけて、合併前の旧東京銀行と旧三菱銀行が米地銀を買収。これらがユニオンバンクの源流に当たり、経営統合に伴い傘下の米地銀も合併し、TOB(株式公開買い付け)を経て完全子会社となったのは2008年のことだ。