2019年、五大法律事務所のパートナーから三菱UFJフィナンシャル・グループの執行役常務グループCLOに転じた森浩志氏。森氏はなぜ安泰だった法律事務所の座を捨て、「斜陽産業」といわれる金融機関の企業内弁護士に転じたのか。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の最終回では、今、日本の法務部に求められている機能や、社内役員に外部出身の弁護士がいる意義などについてとことん聞いた。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
あえて金融という「斜陽産業」へ
死ぬほど勉強して三菱UFJに転身
――森さんは2019年に西村あさひ法律事務所のパートナーから三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)のグループCLO(チーフリーガルオフィサー)に転身されたわけですが、なぜあえて金融機関の企業内弁護士の道を選んだのですか?
周りからは、「なんで金融なんて斜陽産業に行くのか」と言われたりもしました(笑)。
しかし、日本国内は人口減少が始まり、成熟市場となっているので、日本企業は今後ますますグローバル展開が不可避になります。また、マイナス金利にいつか終わりがやって来れば、経済が大きく揺らぐ可能性もある。
三菱UFJFGは、そんな激動期を迎えようとしている日本の金融インフラを支え、日本企業が世界と戦う後押しをして、経済の活性化を促すことができる。その役員として経営に携わるのは、非常にやりがいがあることだと思いました。
とはいえ、いざ採用が決まってあらためて聞いていくと、グローバルヘッドとしてグループの全てのリーガルマター(法務関連事項)を統括するような立場だというじゃないですか。これは本当に重責だなと。
私が来たことで周囲のモチベーションが落ちるようなことがあってはいけないので、ひとまず英語の発音教室に通い始めました。それとは別にスパルタ英語学校にも行きましたし、頭の回転も年とともに鈍っているだろうと、中学生と机を並べて速読の授業も受けて……。もちろん、経営の勉強をやりつつです。死ぬほどがんばりました。
――50歳を過ぎてから中学生と速読(笑)。そもそも、転身のきっかけは何だったのですか?