三菱UFJフィナンシャル・グループのフィンテック(ITと金融の融合)子会社が岐路に立っている。過去の失敗を踏まえ、今年4月、親会社との協働に特化する方針に踏み切った。日本銀行から来た新トップの下で何を目指すのか。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
ジャパン・デジタル・デザイン社CEOに
元日銀フィンテックセンター長が就任
3月末日。3メガバンクグループの一角、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)内のある組織で、ひっそりとトップ交代が行われた。
三菱UFJFGの子会社であり、デジタル領域などの新規事業開発を担うジャパン・デジタル・デザイン(JDD)。その代表取締役CEO(最高経営責任者)を務めていた上原高志氏が退任し、後任に日本銀行でフィンテックセンター長などの要職を歴任した河合祐子氏が就任した。
そもそもJDDとは、三菱UFJFG内部のデジタル戦略組織を独立させる形で、2017年10月に立ち上がった新興の会社。初代トップとなった上原氏は、銀行の生え抜き行員として内部組織を取りまとめていた人物だ。
JDD設立の背景には、予算確保における判断の遅さやエンジニアといった外部人材の採用難など、新サービスの早期開発を実現する上で、巨大組織が故にしがらみの多い銀行グループの内部で障壁が生まれていたことがある。
設立直後の開所式には、平野信行・三菱UFJFG社長(当時)や三毛兼承・三菱東京UFJ銀行頭取(社名と肩書は当時)が登壇し、新会社への期待を語っていた。
だが、大々的なお披露目会を開いた当初の熱狂ぶりとは裏腹に、これまでのJDDの実績は芳しくないと言わざるを得ない。