ユニクロ・GUのセルフレジを巡る特許訴訟で、5月にファーストリテイリングに勝訴した特許の開発元であるIT企業アスタリスクが、9月30日に新規上場した。裁判の過程で、アスタリスクは特許を譲渡していた。なぜ特許を手放さねばならなかったのか。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

ファストリに「特許訴訟で勝訴」の
アスタリスクがマザーズに新規上場

ファストリに「特許訴訟で勝訴」のアスタリスクがマザーズに新規上場ファーストリテイリングとの特許訴訟に勝訴したアスタリスクが9月30日、東証マザーズに新規上場した 写真提供:アスタリスク

 9月30日、満面の笑みで東証マザーズの上場の鐘を鳴らしたのは、大阪市淀川区のIT企業、アスタリスクの鈴木規之社長だ。

 アスタリスクは、モバイル機器に装着するバーコードリーダーの企画や開発などを手掛けるベンチャー企業である。主力商品よりも企業の知名度を高めたのは、GU・ユニクロのセルフレジを巡る訴訟で5月、ファーストリテイリングに知的財産高等裁判所で勝訴したことだろう。

 ただし、訴訟の元となった特許について、アスタリスクは2月に知財ライセンス企業NIPに譲渡している(『ユニクロ・GUセルフレジの「特許つぶし」にファストリが失敗、知財高裁で敗訴』参照)。虎の子の特許を手放したのは、アスタリスクの悲願である株式上場を実現するためだった。

「上場準備を始めたのは10年前。ところがユニクロさんとの訴訟リスクを解決しないと上場できなかった。僕は新しい商品開発をして、次のステージに向かっていきたかった。訴訟のために使う時間も大きく、人生の短い時間でこんな戦いを続けることはあほらしいと考えた」と鈴木氏は振り返る。

 上場初日、アスタリスクの初値は5760円、終値は6310円で、公募価格3300円を大きく上回る上々のスタートを切った。

 手放したとはいえ、特許の“発明者”である鈴木氏にとってファストリとの特許訴訟は今も心配事の一つだ。そしてこの特許訴訟は今、新たな展開を迎えている。