東芝:豊原正恭前副社長と加茂正治前常務(左)とよはら・まさやす/1980年東芝入社、2009年5月東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス取締役社長、11年執行役上席常務、18年執行役専務、19年副社長、21年6月退任。(右)かも・まさはる/1992年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、2000年USEN取締役副社長、10年ローソン常務執行役員、16年デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社シニアアドバイザー、17年マッキンゼー パートナー、20年東芝入社、豊原執行役専務付を経て執行役上席常務、21年6月退任 Photo by Hirobumi Senbongi

東芝が経済産業省と組んで株主の議決権行使を制限したとされる問題で、経営の混乱を招いた責任を取って退任した東芝の豊原正恭前副社長と加茂正治前上席常務がダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。両氏は退任の引き金になった外部弁護士による調査報告書は「メールの文言を継ぎはぎしたフィクションだ」と断言。東芝に公平な再調査と、その結果の公表などを求めた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

報告書は「言葉を継ぎはぎしたフィクション」
東芝現執行部は毅然として否定せよ

――6月10日に公表された弁護士による調査報告書は、東芝が経産省と組んで株主の議決権行使などを制限したことを問題視し、20年の東芝定時株主総会が「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けるものでした。お二人はその責任を取る形で6月に退任したわけですが、このタイミングで取材に応じたのはなぜですか。

豊原正恭前副社長 この間、法律の専門家とも協議しましたが、調査報告書はそもそも法的にきちんとした独立性、正確性が担保されていないものです。それに加え、シンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが選任した弁護士による調査に基づいており、客観的とは言い難い内容です。

 20年の定時株主総会の運営について真相を究明するために東芝が立ち上げたガバナンス強化委員会(元最高裁判所判事らで構成)による検証結果や新たな中期経営計画の発表といった重要なイベントが10月にも予定される中で、株主をはじめとしたステークホルダーの皆さんに本当のことを知ってもらいたいと思ったのです。

加茂正治前上席常務 株主の中には、アクティビストのように事業や資産売却による配当や自社株買いなどの株主還元を強く求める方と、株主還元よりM&A(企業の合併・買収)、研究開発、設備投資による中長期的な成長を求める方の二通りがいますが、東芝株主の主流は後者なのです(編集部注:20年の定時株主総会時におけるアクティビストの議決権ベースの株式持ち分は3割程度だった。内訳は、エフィッシモ15.5%、3Dインベストメント・パートナーズ4.1%、キング・ストリート・キャピタル・マネジメント3.2%など)。

 そうした実態があるのに、一部のアクティビストの意見を色濃く反映する取締役会の構成にするのはバランス的におかしい。われわれがアクティビストによる株主提案における取締役候補者数を減らしてほしいと考えたのは、このような株主全体の利益をバランス良く実現しようとしたからなのです。

――弁護士による報告書には具体的にどんな問題があったのですか。