政府と一体となり物言う株主(アクティビスト)に圧力をかけていたことが明るみになった東芝が、定時株主総会を前に4人の役員を事実上更迭した。今後はアクティビストと現経営幹部との間でポスト争奪戦が激化。非上場化を含む東芝の身売りなどで取締役会が分裂する事態も予想される。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
東芝が2015年に発覚した不正会計以来の大混乱に陥っている。その発端となったのは6月10日に公開された外部弁護士による調査報告書だ。
報告書には、20年の東芝定時株総で、物言う株主(アクティビスト)から社長の座を脅かされていた車谷暢昭氏が、当時、官房長官だった菅義偉首相や経済産業省幹部らを巻き込んで保身を図る様が、克明に描かれている。政治力を使って外国人投資家に株主提案を撤回させようとしたり、議決権を行使させないようにしたりする不適切行為を白日の下にさらした。
登場人物同士の内々のやりとりが多数盛り込まれた報告書は、かなり刺激的だ。だがそれ以上に衝撃的なのは、東芝のガバナンスを強化するために社外から招かれた車谷氏や取締役会議長の永山治氏、監査委員会委員長の太田順司氏らが株主への圧力に関与したり、事実に反する調査報告をまとめたりしていたことだ。
今回、役員4人の退任が決まったが、そのうち実に3人が社外出身者なのだ。ミイラ取りがミイラになるとはこのことだ。
東芝にとって、経営の中枢にいた4人を失うダメージは計り知れない。4人のうち2人は再任予定だった現取締役で、6月25日の定時株総に諮る取締役候補は13人から11人に減った。さらに、執行役の中心人物だった2人も去ることになった。
アクティビストが人事の混乱を機に役員ポストを奪取しようとするのは間違いない。東芝の不適切行為や今後予想されるポスト争奪戦の行方から、今回の危機の深刻さを読み解いていこう。