綱川氏(右)は、東芝の財務安定のため、出身母体である医療機器事業をキヤノンに売却した苦労人だ
綱川氏(右)は、東芝の財務安定のため、出身母体である医療機器事業をキヤノンに売却した苦労人だ Photo:Bloomberg/gettyimages

東芝の車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)が辞任の意向を固めた。後任は前社長の綱川智会長が復帰する。物言う株主との対立による混乱の収拾など、課題は山積している。(ダイヤモンド編集部 杉本りうこ、千本木啓文)

 車谷暢昭社長の退任のきっかけになったのは、東芝が幹部社員らを対象に行う「社長の信任調査」の結果だ。同調査は2015年に発覚した不正会計に経営トップが関与した反省から毎年実施し、社長人事の参考にしてきた。

 その直近の調査で、投票の半数以上が車谷氏に不信任だったため、取締役候補者を決める指名委員会は車谷氏の再任は難しいと判断、社長交代へ動いていたようだ。つまり、東芝では経営トップに対する遠心力が働いている。社長として再登板する綱川智氏は、それを求心力に変えることが求められる。

 綱川氏が前回、非主流派の医療機器部門から社長に抜てきされたのは、不正会計や米国の原発建設事業の巨額損失による経営危機のさなかの16年だった。債務超過から脱して上場を維持するため、6000億円の増資やNAND型フラッシュメモリー大手キオクシア(旧東芝メモリ)の売却を行った。

 こうした実績があるため、綱川氏はCEOを車谷氏に譲った後も、社内では「功労者」として尊重されてきた。