次期首相の最有力候補、自民党の安倍晋三総裁の過激な発言が止まらない。

市場では、松任谷由実の名曲になぞらえて「リフレが叫んでる」と揶揄される
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「基本的には2~3%のインフレ目標を設定し、それに向かって無制限緩和していく」(読売国際経済懇話会)、「公共投資を行い、そのための建設国債を日本銀行に全部買ってもらう」(熊本講演)。

 ここまでくると、「失言ではなく確信犯」(債券市場関係者)。好きなだけ財政出動すべく、日銀が国債を直接引き受けることは、財政法が禁止している。財政赤字のファイナンスであり、戦後のようなハイパーインフレを招きかねない。

 安倍総裁がこうした発言を繰り返す背景には、自身の焦りが見え隠れする。12月16日の衆議院選挙では勝てるとしても、来年7月に予定している参議院選挙で負ければ、首相の座から引きずり降ろされる可能性が高い。

 そのため、少なくとも「参院選までの半年間は、“上げ潮”政策を取りたい」(政府関係者)のだという。また、そういったアドバイスを行う経済政策ブレーンとして、政府内ではリフレ派で知られる数人の名前が挙がる。

 しかし、首相経験者のこうした発言自体に、市場や海外メディアは呆れ気味だ。短期的には株高に動いても、「企業の生産性の向上や将来の収益向上を伴わなければ、それは一時的なものに終わる」(市場関係者)からだ。

 安倍総裁の経済政策は、いわば「雨乞い」のようなもの。緩和をし続けさえすれば、いつかはインフレになる(雨が降る)──。だが、政府債務が巨額に積み上がる国で日銀が国債を買い続け、財政節度が守れないと市場が懸念すれば、国債がいつ暴落しないとも限らない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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