上海で謎のファッションブランド
「SHAN_QOO_FUU(シャン クー フー)」を立ち上げる

 ファッションブランドをつくろうと思い立ったのには、もう一つ別の理由もありました。私はそれまで周囲の仲間たちと音楽にすべてを捧げ、最高の音づくりを追いかけていました。

 ところが周囲を見渡せば、友人のミュージシャンもクリエーターも、作品は素晴らしいのに、経済的には「食うや食わず」の状況でした。

「音楽では食べていけない」と言って、音楽活動をやめていく友人も多かったのです。だからこそ私は思いました。今の仕事をみんなが続けていくために、みんなが生活していける「システム」をつくる必要がある。私は環境づくりも、音づくりの一環だと考えていたのです。

 音楽や映像、デザインやアートも巻き込んだクロスジャンルのファッションブランドを作って、ビジネスを成功させる。それによって周りの人たちの生活を支え、彼らが表現活動を続けていけるようにする。そんなビジョンを思い描いていました。

 そんなことから、ファッションブランド「SHAN_QOO_FUU(シャン クー フー)」を上海で立ち上げたのです。服のデザイナー、生産管理の担当者、グラフィックデザイナー、営業の担当者の四人と契約を結び、私とそのメンバーの五人で始めました。

 服のデザイナーは、私が高校生のときから好きで通っていた京都のアパレルショップのオーナーでありデザイナーでした。生産管理の担当者はアパレルの生産管理のプロフェッショナル、グラフィックデザイナーはプロのデザイナー、営業担当者はそれまで別のファッションブランドのプレスの担当者という、各分野の精鋭を集めたチームでした。