ところがその2日後の朝、あわてて出社したA社長はB広報部長の顔を見るなり、
「大変だ。今Cの事務所の社長から電話があって、ウチの会社が総菜を新発売することと、そのCMにCが出演することがTwitterで拡散されているそうだ」
「えっ? 本当ですか?」
「ああ。この事態に社長はカンカンで、CのCM出演は白紙にされたし、乙社にもこの情報が知られた以上何か対抗策を打ってくるに違いない。参ったな」
A社長はしばらく頭を抱えたまま黙っていたが、ふと、
「しかし、なぜこのことが外部に漏れたんだろう?新発売の総菜の件はともかく、Cのことは私と君以外、誰も知らないはずなんだが……」
とつぶやいた。それを聞いたB広報部長はある疑問が湧いた。
「まさか、D子が?」
秘密の情報をSNSに流したのは、広報部長の娘だった
B広報部長はその夜D子を厳しく問い詰めると、Cの話を聞いた夜、その内容を友人にLINEのメッセージで送ったこと、LINEを受け取った友人は、その後「びっくり情報だよ」として、D子のメッセージをそのままTwitterで流していたことを泣きながら話した。事実を知ったB広報部長はがく然とし、家族だから大丈夫だろうと軽く考えて話してしまったことを深く悔いた。
次の日の朝、B広報部長はA社長に情報漏えいの原因を正直に話し、謝罪した。それを聞いたA社長は、
「君は何てことをしてくれたんだ!新発売の総菜にわが社の命運を懸けていたのに、これまでの苦労が水の泡じゃないか!」
と激怒し、しまいには、
「もういい! 君の顔は見たくない!」
と叫びながら社長室を出ていった。B広報部長はただうなだれるしかなかった。