影響が広範囲に及んだのがJR東日本だ。中央線(快速)や山手線は午前0時過ぎに運転再開したものの、京浜東北線、常磐線、京葉線、武蔵野線は点検が長引いたため、運転再開は8日朝までずれ込んだ。

 また運転再開後の徐行運転や、夜間のうちに列車が車庫に戻れなかった影響で、8日のラッシュ時間帯は運転本数が大幅に削減されたため、複数駅で入場制限を実施。ホームに人があふれた赤羽駅では、列車を通過させる異例の事態となった。

 これに対し「都市基盤の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈した」という指摘もあるが、その妥当性はともかく、局所で見れば大混乱が生じたのは事実であり、それは事業者、利用者とも望ましいことではなかったはずだ。なぜこのようなことになってしまったのだろうか。防ぐ手だてはなかったのだろうか。

事業者で異なる
点検の基準

 東京都区部で震度5以上を観測した地震はそう多くない。気象庁の「震度データベース」によれば、1923年の関東大震災以降では、1926年8月、1928年5月、1929年7月と関東地震の影響と思われる地震が続いた他は、1985年の茨城県南部を震源とする地震、1992年の東京湾を震源とする地震、2005年の千葉県北西部を震源とする地震、2011年の東日本大震災だけであり、ここ40年は概ね10年に1度の間隔で発生していることになる(ただし、2014年の伊豆大島近海を震源とする地震では千代田区大手町のみ震度5弱)。

 2005年、2011年、そして今回の直近3度の地震で「課題」とされたのが鉄道の復旧である。自然災害による鉄道の混乱といえば台風や大雪も挙げられるが、毎年のように訪れる台風には計画運休が、数年に1度の大雪には間引き運転が行われ、利用者にも定着しつつあるのに対し、10年に1度、しかも予兆なく突発的に訪れる地震への対応は困難だ。

 もうひとつ難しいのは100年に1度の震度6~7クラスの大地震への備えと、10年に1度の震度5強クラスの地震への備えが、ひとくくりに「地震対策」として語られることだ。その結果、震度5強クラスの地震でこれだけの混乱が生じるのだから、首都直下地震が来ればひとたまりもないだろう、という言説になる。

 もちろん同じ地震対策ということで連続した面もあるが、事業者も利用者も心構えは大きく違う。