SBIホールディングスによる新生銀行への株式公開買い付け(TOB)は、銀行業界で初の「敵対的TOB」に発展した。異例の事態だが、筆者はこれに賛同している。SBIが描く、新生銀行を中核とした地銀連合構想が実現すれば、弱小地銀の再生や公的資金注入行からの資金回収の可能性が出てくるからだ。その論理的根拠をお伝えする。(京都大学経済学部特任教授、経済学博士 宇野 輝)
新生銀行に敵対的TOBを仕掛けた
SBIの地銀連合構想に賛同する理由
日本銀行による長引く低金利政策に加え、新型コロナウイルス禍で地域経済は低迷し、地方銀行の決算は厳しい状況にある。このため、特に経営規模が小さく、収益力の弱い地銀は生き残るための経営体質強化策として、経営統合や資本業務提携の道を選択せざるを得ない。
その具体的な対策として日銀は、地銀が経営統合や経費削減に取り組めば、日銀に預ける当座預金に年0.1%の上乗せ金利を付与する制度を適用する。さらに政府は地銀の再編支援策として、同一県内の地銀再編を独占禁止法の適用外とする特例法を施行(2020年11月)。加えて、改正金融機能強化法により、地銀の合併・統合にかかる初期費用の一部を交付金で支援する制度を整えた。
これらの施策を受けた地銀再編は、従来の同一県内での第一地銀同士、あるいは第二地銀同士の経営統合とは違う形態が表面化し始めた。県外の中位・下位行の地銀同士の地銀再編が出てきたのだ。さらに、証券業界を巻き込んだSBIホールディングスの地銀連合構想という新しい地銀再編も現れた。
日本のバブル崩壊後の地銀再編を振り返れば、1995~2005年に起きた経営破綻による第二地銀の再編、そして20年までは上位行を中心にした下位行を巻き込んだ経営統合が行われた。
しかし、近年の厳しい経営状況に耐えかねた地銀は、生き残りを懸けて広域の経営基盤を確保するため、業態を超えた業務提携や資本提携に踏み出し、新しいフェーズを迎えている。米国の銀行再編の歴史に鑑みれば、ようやく日本もM&A(企業・事業の合併・買収)や証券業界絡みの地銀再編を迎える段階に入ったと思われる。
今、注目されているSBI地銀連合構想について筆者の考えを以下に述べたい。