10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。
「左利きの才能」を最大限に発揮する方法
左利きは、右手がうまく使えなくても「右利き優位の社会」で生き抜いています。さらにその上で、左利きの持つ独自のポテンシャルを最大限に発揮できれば、左利きは最強になれます。
そのために効果的なのが「左脳」を鍛えることです。
私も意識して左脳を鍛えるようにしたら、メキメキと力を発揮できるようになった一人だからこそ、すべての左利きにこのことを伝えたいのです。
今でこそ私は、こうして100冊近い書籍や100篇ほどの英語論文の執筆、講演会などを行っていますが、子どもの頃は、字を読むことに困難がある「音読障害」でした。
文字を読むというのは、一見すると単純な動作です。しかし脳の中では、想像もつかないような複雑なプロセスを経ています。
まず、左脳の視覚系脳番地で文字を追いかけ、一文字一文字をまとまりにしてつなげた上で、音に変換した脳内の言語を聴覚系脳番地で聞き取り、さらに左脳の記憶系脳番地に記憶している言葉の意味と結びつけて初めて、文章としての意味を理解できるのです。
私は、聴覚系脳番地からの情報処理に難点があり、脳内で言葉を響かせることができなかったため、国語の教科書をスラスラと読むことができませんでした。つまり、声に出す外言語に対して、内言語の能力が未熟なままでした。
しかし、私は4歳のときに「右手が思うように動かない」ことがイヤで、右手で習字を習い始めたのをきっかけに、少しずつ右手を使えるようにトレーニングしてきました。あとから考えれば、そうして右手を使うようにして地道に左脳を刺激し続けたからこそ、国語と英語の成績がさんざんだった私が医学部に合格することができ、脳内科医として患者さんたちの悩みを取り除き、笑顔で暮らしていただける支援ができるようになったのです。
私のように「音読障害」ではなくても、「言葉がとっさに出てこない」ことを自覚し、コンプレックスを持っている左利きは少なくないでしょう。(その理由は、こちらの記事をご覧ください:最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?)
その左利きの悩みを解消するため、そして脳の力を存分に引き出すために、非常に効果があるのが左脳を鍛えることなのです。