10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。

脳内科医が教える「左利きが脳の瞬発力」を鍛える1つのコツPhoto: Adobe Stock

脳の「瞬発力」を鍛えよう

「ワンクッション思考」に弱点があるとすれば、「ひと手間」に少し余分な時間がかかること。そのため、左利きは「脳の瞬発力」がないと悩む人が多くいます。(「ワンクッション思考」についてはこちらの記事で解説しています:「左利きと右利きの発想」脳内科医が明らかにする決定的な違い

 脳の瞬発力を高めるためにできることが「視覚系脳番地」を鍛えることです。人間の脳の瞬発力には2種類あると私は考えます。

 1つ目は「言葉を耳から聞いて行動に移す力」であり、2つ目が「その場の状況を目で見てから動く力」です。言葉の場合、最後まで聞かないと意味や意図がわからないため、すぐに動くことはできません。

 しかし、目で見たものには、瞬時に対応することができます。そのため、視覚系脳番地を鍛えることで、脳の瞬発力がアップするのです。

ポイントはしっかり「見る」こと

 具体的にどうすればよいかというと、とにかくしっかり「見る」のを意識することです。

 たとえば、相手をしっかり観察し、微妙な顔色の違いから「どうして、今日は浮かない顔をしているのだろう」と考えれば、視覚系と思考系の回路が鍛えられます。話をする人の表情やしぐさを見ながら、言葉にじっくりと耳を傾けたら、視覚系と聴覚系のつながりがグンとよくなります。

 散歩の途中でキレイな景色やカワイイ動物などを見て、感動したり優しい気持ちになったりすれば、視覚系と感情系がしっかりと結びつくでしょう。美しい夕日は、スマホで写真を撮ることで、視覚系と運動系も働かせることができます。

 道で出会った犬を見て、自分が昔飼っていたペットを思い出したら、視覚系と記憶系を結びつけたことになります。さらに買い物の帰りに、いつも行列ができているお店に入って観察し、新しいアイデアが浮かんだら、視覚系と理解系のつながりが強くなっていきます。

 こうして、視覚系から他の7つの脳番地にすぐにつなげることを繰り返せば、脳番地と脳番地のつながりがスムーズになります。脳にしっかりとした思考のネットワークを作れば、同じことをするときのスピードはどんどん速くなります。そして、脳の瞬発力が上がっていくのです。

脳内科医が教える「左利きが脳の瞬発力」を鍛える1つのコツイラスト/毛利みき

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com