10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。
「ワンクッション思考」の
ひと手間が脳を強くする
左利き独特の脳の使い方が生み出す、すごい個性の3つ目は「ワンクッション思考」です。私は「ワンクッション思考」が、すごい左利きを生み出す最も大きな要因ではないかと考えています。
左利き独自の「ワンクッション思考」とは、簡単に説明すると、右脳と左脳をつなぐ神経線維の太い束である「脳梁」を介して両方を頻繁に行き来する脳の使い方です。
右利きの場合、基本的に左脳を多く使い、右脳は眠らせていることが多いものですが、左利きは両脳をまんべんなく活用している人がほとんどです。(関連記事:最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?)
では、なぜ左利きは右利きと比べて、右脳と左脳を両方使うことが多いのでしょうか。
大きな理由としては、左利きは利き手で右脳を活性化させると同時に、現代社会で生活するために欠かせない、言語情報の処理を行う左脳も絶え間なく使うからです。
動作によって手を使い分ける左利き
そして、左利きは右利き優先の社会に順応しようと、左手だけではなく右手を使う機会が多いため、両手で両方の脳を刺激しています。私は自分の意志で右手も動かせるように訓練しましたが、多くの左利きも動作によって、左手と右手を使い分けていることが多いものです。
たとえば、ビンの蓋を開けるときやネジまわしを使うとき、またガスの元栓を閉めるときなどは右手がやりやすいという人が多いでしょう。自動販売機にお金を入れるときや、自動改札機を通るときなども右手を使うほうが便利です。文字を書くのやスマホの操作は右で、ボールを投げるときは左という人も少なくありません。
右利きが、動作によって左手も使うということは、ほぼありませんよね。そのぶん左利きは、両脳を刺激する機会に恵まれています。
こうして脳梁を通る「ワンクッション」が、右脳と左脳、両方を覚醒させ、脳を強くしています。そして、使える脳の範囲が広がることで、左利きのすごい「直感」や「独創性」が生み出されているのです。
実際に、以下は私が開発した脳の枝ぶり画像で、左利きと右利きの理解系脳番地を通過する断面を比較してみました。黒く示された領域が脳が使われて成長していることを示します。これを見ると、右利きに比べて左利きは左右とも黒く示されています。