右手と左手でできることを「比べる」

 私は、左利きはもっと積極的に右手も使ってみてほしいと考えています。

 その大きな理由の一つが、右手を使えば左脳を刺激することができるからです。そしてもう一つの大きな理由が、右手を使うことで「ものごとを対比して考える」ための情報を得られるからです。

 左利きが右手を使うと、左手と右手で「何を」「どのレベルで」できるのかを比べることができます。実際に、何をどのくらいできるかできないかを対比させて考えることで、思考力をグンと深めることができるのです。

 そして、具体的な情報を比較してものごとを考えるクセが身につけば、なにごとにおいてもエビデンスに基づいた行動ができるようになるでしょう。つまり、あらゆる局面において正しく判断する脳の仕組みを構築することができるのです。

 ここで大切なポイントが、比べるのは、自分の右手と「他の右利きの人ができること」ではないということです。それでは、自分のバッティングをプロ野球選手と比較するようなもので、いつまでたっても追いつけずに劣等感が増すばかりです。自分の左手でできることと右手でできることを比べながら、右手でもできることを増やすようにしていきましょう。

「左脳」をもっと鍛える脳トレ

毎日「“To Do”リスト」をつくる

 左利きが左脳を鍛えるためには、とにかく思ったことを言語化する習慣を持つことが重要です。まずは1日の始まりに「“To Do”リスト」をつくりましょう。

 朝起きて身支度をすませたあと、その日にやるべきことをリストアップし、時間別に並べていきましょう。リストを作成するのは「10分間」と決めて、時間内に作成するようにしてください。

 昨日までとその日の状況を見極めてやるべきことをリストアップ、そして、実行するために何をどう準備するのかなど、順序立てて言葉で考えることで集中して左脳を働かせることができます。また「“To Do”リスト」は、できれば、手帳にある枠や決まった大きさの紙に、書き出すといいでしょう。

 ある程度の制約がある中で端的に言葉をまとめる作業が、左脳の思考系脳番地を活性化させます。

ブログやSNSで発信する

 ブログやSNSを使い、自分の考えを発信してみるのも、左脳を鍛えるのに非常に効果があります。コンテンツは、趣味でも仕事のやり方でも、自分が興味のあるものであれば続けやすいでしょう。自分の言いたいことを明確にし、不特定多数の人に正確に伝えようとすることで、左脳の思考系や伝達系の脳番地がフル回転します。

 左脳の思考系が鍛えられると、ものごとを考えて決断したり、計画したりする能力が高まります。すると「なかなか決められない」「2つ以上のことを同時にこなせない」「やるべきことに追われて疲弊する」などの状態が改善されていきます。

 また伝達系が活性化することで「会話が続かない」「説明がわかりにくいと言われる」などの左利きにありがちな悩みが解消されていくでしょう。

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。
発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com