「リベンジ夜ふかし」をしてしまうメカニズムとその対処法

──よく、「ストレスが溜まったらちゃんと休んで回復しましょう」「朝は早起きして規則正しい生活を送りましょう」みたいなアドバイスもあると思うのですが、発達障害の特性がある人にとっては、そういった行動は問題解決にはならないのでしょうか?

本田:うーん、それが有効な場合もありますが、「やりたいこと」=「休むこと」ではないんですよ。

 もちろんストレスが溜まったら休む、というのも重要ですが、発達の特性がある人の場合、「睡眠をとる」ことよりも「やりたいこと」を優先させたほうが快適に過ごせる場合もあるんです。

 たとえば、私はお笑いなどの動画を観るのが大好きで、1日3時間は動画に費やしたいんです。それで寝不足になったりもしますが、そのほうが自分にとっては生きやすいんですよね。

 だから、「生活リズムが崩れてしまう」という悩みを聞くことも多いのですが、そもそも「生活リズムを整えなきゃいけない」という思い込みのほうをなくすべきなんじゃないかと私は思っています。

──ええ、そうなんですか!? 私も寝る前に必ずスマホを見てしまったりと夜ふかししがちなので、やめたいと思っているのですが……。

本田:でもそれ、本当にやめる必要があるんだろうか? と、私はいつも思うんですよ。

 趣味に時間を使いすぎて寝不足になりやすい人が、生活リズムを整えるために趣味の活動をやめてしまうと、生活リズムは安定するかもしれませんが、趣味の時間がなくなったことで気晴らしをしにくくなります。意識を「オフ」にする時間がなくなってしまうんですよね。

 そうなると、「オン」のときに抱えたストレスやイライラを解消する術がなくなり、結果として、仕事に支障が出る可能性もあって。仕事のストレスが解消されないと、寝ようとしてもあれこれと悩んでしまって、結局、寝不足になるということもありますし。

──い、言われてみれば……。苦手な早起きにチャレンジして仕事の時間を増やしていたときのほうがかえってストレスが溜まっていた気がします。

本田:生活リズムが崩れている人は「趣味をやめて睡眠時間を確保しよう」と考えがちなんですが、その考え方こそ捨てて、「仕事に差し支えなければいまのままでOK」と考えたほうがいいと思います。

 もし睡眠不足を解消したいのであれば、「やりたいこと」を削るのではなく、「やるべきこと」のなかから「やらなくていいこと」を見つけて、睡眠時間を確保することを考えてみるのがおすすめです。

──そうか、そもそも「早起きしなくちゃいけない」「生活リズムが狂っていたらダメ人間だ」という考え方こそ、他人に合わせて過剰適応してしまっている証なのかもしれませんね。

本田:私がいつも思うのは、もっとやりたいことをやっていいんだよ、ということ。

 これは慰めとかではなくて、本来、「やりたいこと」を達成するために「やるべきこと」があるはずなのに、他人の目を気にするあまり、周りがよしとする生き方に過剰に合わせようとするのって、つらいじゃないですか。

──いやー、本当ですね。今日お話を伺っていて、自分が「周りによく思われること」をかなり優先していたんだなと、実感しました……。

本田:スマホや動画やSNSをダラダラ見てしまうことに対しても罪悪感を覚える人が多いですが、べつに見てもいいんですよ。

「やるべきこと」をきちんとこなすために、必要な時間なんです。

 身の回りのことなど、やめても大丈夫なことって、案外たくさんあります。

 わざわざ趣味の時間や好きなことをやる時間を減らす必要はありません。

「やるべきこと」と思っているもののなかから「しなくていいこと」を見つけ出し、「やりたいこと」がもっとできるようになって、少しでもみなさんの心にゆとりが生まれたらいいなあと思います。

発達障害の人ほど「リベンジ夜ふかし」をやめられないメカニズム

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